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「認知症110番」のデータ解析 報告書を刊行 ガイドブックも

データベース化進展・研修
昨年6月に行われた電話相談員の入力システム研修風景

 認知症予防財団の無料の電話相談「認知症110番」に寄せられた開設以来の21年分2万件を超える相談記録票をデータベース化する事業が順調に進んでいる。2014年の半ばには全記録票の入力が終わるほか、この3月には入力の済んだデータを統計分析してまとめた報告書と、早期発見が大事といわれる認知症を理解する入り口になるようなガイドブックも刊行される。「自分は大丈夫」と思う半面、「怖くて病院に行けない」と不安を抱える人や家族が最初に読んで次に進むことをそっと後押しする内容だ。

 「認知症110番」は財団の前身「ぼけ予防協会」が設立された1990年の2年後、92年7月にアフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)の委託事業として「ぼけ110番」の名前で開設された。その後、協会の名前が現在の認知症予防財団に変更されたのに合わせ名称も変わっている。

 財団では増加傾向にある相談によりきめ細かく対応するため、相談者の過去の相談履歴を迅速に閲覧できるようにする相談記録票のデータベース化事業を昨秋以降本格化させてきた。過去の記録票の入力と並行して、相談員にも入力方法に慣れてもらうための研修も進め、昨年9月以降はすべて直接データベースに記録されるシステムになっている。

 これによって相談員は相談内容をB4判の紙の記録票に手書きする必要が無くなるほか、継続の相談者からの電話の場合、相談員が家族関係や相談内容の履歴を確認するためいちいち立ち上がって以前の記録票を捜し出さなくても、モニターの操作で相談内容の履歴をスムーズに引き出せるため、それを見ながら現在の状況をじっくり聞いて相談に乗ることができる。

 この事業は公益財団法人JKAの補助金交付対象事業となり、電話相談記録票のデータベース化に加え、報告書・ガイドブックの編集発行、シンポジウムの開催も準備している。

データベース化進展・委員会
報告書やガイドブックの内容について検討する委員会メンバー

 3月に刊行予定の報告書(A4判50ページ)には過去21年の日本社会の変化が分かるようなデータが多い。たとえば相談者は日本人の高齢化を反映し年老いた夫妻の配偶者からの電話が徐々に増え、逆にかつては多かった同居する息子の嫁からの相談は激減している。少しでも最新のデータを盛り込むため、現在、追い込みの作業に入っている。

 一方ガイドブック(A5判18ページ)はシリーズ化を視野に最初に読んでもらう冊子と位置づけ、読みやすさ、分かりやすさをモットーに編集。カラーのイラストをふんだんに取り入れ、いつでも繰り返し手にとってもらえるような体裁を心がけた。

 冊子のタイトルは「これって認知症ですか」。早期発見が大事なので、まずは冊子の中で紹介されている簡単なチェックリストで調べ、疑わしい場合はかかりつけ医や病院に行くことを勧めているが、それでも病院に行きたがらない場合の方法は、と全体の流れをケースごとにイラスト入りで紹介している。

 どちらも3月中旬に完成の予定。

2014年3月