吉沢久子さん 新刊本

「96歳。今日を喜ぶ。一人をたのしむ」

吉沢久子さんの新刊「96歳。今日を喜ぶ。一人をたのしむ」

 90歳になってから、毎年1年間に書いたエッセーをまとめている吉沢久子さんのシリーズ7冊目の本「96歳。今日を喜ぶ。一人をたのしむ」が刊行された。

 あとがきで吉沢さんは「そんなに長く生きるとも思っていなかったので、自分でもよく生きてきたものだと思いながら暮らしています。元気でいられるのは、心の支えとなる多くの方々とのおつきあいがあってのことと、自分をしあわせものだと喜んで毎日すごしています」と自身の長寿を周囲に感謝しつつ、謙虚に受け止めている。

 同時に「特別の才能もなく、ただ、生かされている間は、いっしょうけんめいに生きなければと、人によりかからず、自分らしく、ささやかなしあわせを感じ取れるような、静かなくらし方を心掛けている日々です」と現在の心境をつづっている。

 実際、ページをめくっていくと、これまでのシリーズ同様、年齢を重ねても、ひとり暮らしでも、元気に楽しく生きるための心の持ち方のヒントがいっぱいだ。

 たとえば、体力が落ち、庭に野菜を取りに行くのが不自由になったら、小さなプランターに春菊の種をびっしりとまき、日当たりのいい場所に置いて「室内畑」にしておく。新玉ねぎの季節になれば、生を薄切りにして、削りカツオをたっぷりのせ、レモンじょうゆでおいしくいただく。白い玉ねぎに彩りがほしいときは、室内畑の春菊を一つまみ散らせば食欲も進むというわけだ。手間をかけずにもう一品楽しむことができる。

 またサンマの頂き物をすれば、冷蔵庫にスダチやおろしにするダイコンがあることを思い出し、他のおかずになるものを冷蔵庫を開けて確認し、夕食の段取りをすぐに考える。その合間にテレビの料理番組に出ていたころのことを思い出して、と認知症の予防につながるようなモーレツな頭の回転が始まる。

 そんな旬の食材を生かした料理の話も楽しいが、世の中が便利になりすぎて本来人が持っている能力が使われずに衰えていく有り様を心配するなど、社会の出来事に関心を持ちつづけ自分の考えを持って生きていく姿にも教えられるところが大きい。

 海竜社発行、1400円+税。

2014年6月