認知症とうつ病 どう見分ける 長谷川和夫・洋氏が親子で解説書

長谷川洋さん
長谷川和夫さん

 認知症とうつ病は初期症状がよく似ていて、専門職の人でも見分けがつかないと言われる。この二つの病気を分かりやすく紹介する「よくわかる高齢者の認知症とうつ病 正しい理解と適切なケア」(中央法規)が出版された。「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発した認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長の長谷川和夫聖マリアンナ医科大学名誉教授と、長谷川診療所院長の長谷川洋さん親子がそれぞれの専門領域を豊富な実例を挙げて解説する初めての書き下ろし本だ。

 本が生まれたのは、認知症介護研究・研修東京センターが置かれている東京の社会福祉法人浴風会で長谷川さん親子による認知症とうつ病についての講演会が行われたことから。二つの病気はよく似ていて見分けることが難しく、関わり方を誤ると病気の進行を早めるだけでなく、うつ病の場合は自殺という最悪の結果を招きかねない。介護する人が病気を正しく理解し、適切な対応を取ることが求められるゆえんであり、診断や介護の指針となる本への期待が高まっていた。

見分ける一例−−質問への反応
認知症=答えを取り繕う
うつ病=「分かりません」

長谷川さん親子がそれぞれの専門分野を解説した「よくわかる高齢者の認知症とうつ病 正しい理解と適切なケア」

 本書は4章からなり、第1章は「認知症ってどんな病気?」(長谷川和夫)、第2章が「うつ病ってどんな病気?」(長谷川洋)、第3章「認知症とうつ病の関係と併せ持った方への支援」と第4章「認知症とうつ病の知りたいことQ&A」の2章は和夫、洋の2人が担当という構成。

 第2章では「認知症との鑑別は難しい」と題し、洋先生が「私の診療所でも、もともとうつ病で通院されていた方で、ご家族からの情報で健忘症状がでていることがわかり、診断を変更して介護サービスを利用するようになり、治療を継続している方もいます。この方はうつ病のほうはかなりよくなっていて、ご家族からのお話をうかがうまで私は気がつくことができず、診断することの難しさを改めて感じました」と正直に紹介。そして「ご高齢の方の診察においては、絶えず『うつ状態』と『認知症』の2つを念頭におきながら注意深く経過をおう必要があります」と強調している。

 それでもまったく認知症とうつ病の見分けがつかないかというと、「そうとも限らない」という。アルツハイマー型認知症の患者は、質問に対しはぐらかして答えようとする傾向がある。例えば年齢を聞かれれば、「あら先生、女性に年齢を聞くのは失礼ですよ」、あるいは「先生はおいくつかしら」という風に取りつくろう。一方、うつ病の患者は「分かりません」と答える人が多いという。

「よくわかる高齢者の認知症とうつ病 正しい理解と適切なケア」(中央法規)より転載

 別表のようにアルツハイマー型認知症と老年期うつ病では明らかに異なる特徴があり、それを見分けるポイントをいかに身につけることができるかが問われているといえるだろう。

 第4章のQ&Aには「うつ病や認知症が疑われた場合、何科を受診すればいいですか」「認知症やうつ病と似た症状が出る薬があると聞きました。どんな薬ですか」「死にたい、と口にする人には、どのように対応したらいいですか」といった6つの事例が紹介されていて、参考になる。

 本書はA5判、256ページ、2160円(税込み)。図表が豊富に使われ、町のかかりつけ医はもちろん、介護職や家族にも読みやすい内容となっている。

2015年10月