順天堂医院

若年性認知症 週末入院で検査

 65歳未満で発症する若年性認知症の疑いのある人を対象に、順天堂大医学部付属順天堂医院(東京都文京区)は2泊3日週末検査入院の予約受け付けを始めた。働き盛りで平日は受診の難しい人たちを検査に呼び込み、早期発見や早期治療により、仕事が続けられるよう支援する。

 予約は5月11日から受け付けを始め、新聞で紹介されたことから、すでに20件(同12日現在)を超える予約が入り、数カ月先まで埋まっているという。

 若年性認知症は2009年の推計で約4万人。うつ病と見分けがつきにくく、また物忘れなどの症状があって若年性認知症が疑われても、就労中のため平日に仕事を休んで受診するのが難しい。

 順天堂医院には1999年に開設した若年性アルツハイマー病専門外来があるが、週1回の外来で月に4人しか受け付けできないことや、申し込んでから診断が出るまで、複数回の診察や各種検査が必要で、結果が分かるまで通常は4〜5カ月かかっていた。

 週末検査は、金曜午後3時に入院し、日曜の午前に退院するまで、専門外来と同じように脳の画像診断や認知機能検査など10種類以上の検査を受け、約1週間で結果が出る。問診票を書くなど検査を受けるまでに2〜3週間かかるが、それでも全体では1カ月以内に収まるようにするという。

早期治療で回復の可能性

 検査入院の結果が専門外来より3カ月以上早く分かるようにすることで次のようなメリットが考えられるという。

 ①薬物療法を早く始められるので、いい状態を長く保つことができる ②生活習慣が乱れているケースが多いので、生活習慣病の原因になりやすい飲酒習慣などを改めて、もう一回生活のリズムをつかんでもらうことで体質改善が進む。その結果、薬物療法の効果と合わせ認知症予備軍と言われる軽度認知障害(MCI)の場合は回復の可能性も出てくる ③早い段階で診察、診断して症状をつかむことで、仕事の内容を変えてもらうなど逆に職場の環境に働きかけることができる。

 順天堂大学大学院の新井平伊教授は「薬物療法の効果も大事だが、仕事の問題の方が大きい。少しでも早く症状を見つけて治療することで、認知機能の悪化を抑えることができる。また職場と相談することで、仕事の内容を変えて働き続けることも可能になってくる。その結果、ストレスが減り、症状が抑えられて、また仕事にもプラスになる」と説明する。

 週末検査入院の対象者は物忘れやうつ気分の症状があり、若年性認知症が疑われる人。費用は、公的医療保険を使って自己負担が3割のケースでは6万〜8万円という。

 申し込みは「週末検査入院希望」と明記し、住所、名前、年齢、ファクス番号、電話番号を記入して、順天堂医院のファクス(03・3813・9057)に送信する。問い合わせは代表電話(03・3813・3111)より「メンタルクリニック」へ。

8割失職 発症者1411人生活実態調査

 若年性認知症は働き盛りの40〜60代に発症するため、症状が進行すると仕事上のトラブルや周囲の無理解などが重なり失職に追い込まれるケースも多い。発症者が一家の働き手かどうかに関係なく経済的に困窮したり、また退職後の行き場がないなど社会的な対策が求められている。

 認知症介護研究・研修大府センター(愛知県大府市)が2014年に行った生活実態調査によると、就労経験のある1411人のうち、約8割にあたる1115人が定年前に自ら退職(996人)したり、解雇(119人)され仕事を失っていた。

 その他、161人は現在も就労中で、135人は定年退職していた。

滋賀の診療所 「仕事の場」提供

藤本直規院長

 若年性認知症の人たちが介護保険のサービスを受けるまでの空白期間に働き続けられるよう就労支援しているのが、滋賀県守山市の認知症専門診療所「藤本クリニック」の試み「仕事の場」だ。

 藤本直規院長らスタッフのすごいところは、「まだ働いて社会に役立ちたい。少しでもいいから給料が欲しい」という若年性認知症の人の思いをしっかり受けとめ、勤務先に足を運んで仕事が続けられるような解決策を模索することの労を惜しまないことだ。上司や人事担当者、産業医らと話し合い、スタッフの方から仕事の内容や職場の対応を提案もする。それですぐに辞めずに済んだ例もあるという。

 「仕事の場」は病状が進み、勤務先での仕事の継続が難しくなった人たちのための場所。おもちゃ部品の加工など軽作業を10数人で進める。スタッフらがアドバイスし作業をしやすくすることで、その分できる仕事も増える。給料は月額数千円だ。わずかとはいえ自信につながり、また仲間と一緒の仕事で心も安らぐ。「まだ介護保険のお世話になりたくない」という人たちの格好の居場所になっている。

 同クリニックの試みは県の「若年認知症地域ケアモデル事業」として14年度まで3年間続けられ、医療と介護、行政、企業が制度や役割の違いを乗り越えて連携を深めている。

 政府が発表した「新オレンジプラン」では「若年性認知症対策の強化」がうたわれ就労継続支援に注目が集まっている。

 同クリニックや順天堂のように就労支援を前面に打ち出した新たな試みが今後も続くことを期待したい。

2015年6月