「認知症110番」に寄せられた相談を基に電話相談員自身が編集に携った認知症入門ハンドブックシリーズについてさまざまな感想や要望が認知症予防財団に寄せられている。「認知症の人の思いが分かりやすく描かれている」という感想や「レビー小体型など病気の種類ごとの冊子も欲しい」といった声だ。最近は自治体がセミナーの配布物としてまとまった部数を注文してきたり、大手の介護事業者が販促グッズとしてセールス部員に持たせるケースも見られる。ハンドブックを必要とする多くの方の希望に応えられるよう本財団でも有効策を検討している。
無料の電話相談「認知症110番」は1992年7月にスタートし、25年目の今年7月には累計で2万3400件に達する見込みだ。
一方、2013年から始まった認知症入門ハンドブックシリーズの刊行は、シリーズ1から4まで刊行し、ちょうど丸3年となった3月末の総発行部数が累計で1万部に達した。
読み切れる分量(A5判18ページ)と、イラストを見ただけでスッと内容が理解できる読みやすさを心掛けた内容は、「初心者に分かりやすい」「絵が明るくて気持ちが前向きになる」と読者から高い評価をいただいている。
財団にもはがきや手紙が寄せられているが、滋賀県庁が1月に開催した認知症のセミナーでは当日配る資料としてシリーズ3、4の計2000部の注文があり(在庫の関係で実際には計1200部送付)、終了後のアンケートにはさまざまな感想や注文が寄せられたという。
「参考になった」「知人にも教えたい」といった回答のほかに、「症状の説明だけでなく、周りの人の対応についても複数の方法が紹介されていて良かった」「症状の下にカッコ書きで専門用語が記載されているので理解しやすい」などの声もあった。
一方、中身について「自己採点できるチェック表があるとさらに良いのでは」「近くに地域包括支援センターという相談所があることも、その1冊だけでなくすべての冊子に載っていると安心してもらえる」「認知症の人に24時間、365日、優しい気持ちにはなれない。そんな優しい気持ちになれない時に救いの道を示してもらえるといい」と専門的な注文や悩みも寄せられている。
冊子の配布方法についても、病院や相談窓口だけでなく「民生委員にも渡しては?」「各地の認知症疾患医療センターや高齢者ドライバー向けに免許センターに置いてはどうか」などのユニークな提案もいただいた。
財団としては希望するすべての方に冊子をお渡ししたいが、これまでは競輪の補助金を超えた分についても無料でお渡ししており経費もかなりかさむため、限られた部数しか送ることができていないのが実情だ 。
財団には「有料でもいいから、もっと印刷してほしい」との要望や、冊子の裏表紙などにスポンサーの名前やロゴを入れて販促グッズに利用したいという提案も複数いただいており、市販化も含め検討中だ。
また、読者から寄せられた様々な声を生かしつつ、今年度もシリーズ5、6の2冊同時刊行を計画しており、財団ではハンドブックシリーズのさらなる充実を目指していく。
2016年6月