さだまさしさん翻訳の絵本

 シンガー・ソングライターで作家のさだまさしさんが、ベルギーの絵本作家の手による認知症の妻と夫のラブストーリーを翻訳した。

 記憶を失い始めた妻を世話しながら書いた夫のラブレター「とても温かでとてもせつないきみの絵本」はジュヌヴィエーヴ・カスターマンの原作をさださんが翻訳した。

 人間ではなくカンガルーの夫婦の物語にしたことで、進行していく妻の認知症の描かれ方がその分ソフトになっている。それでも幸せに暮らしていた夫婦に暗い影が差し始めると……。妻の作ったスープの味が変わって来て、それを夫が残したことに妻はけげんな表情を浮かべる。やがて妻は洗面所にウサギがいるとおびえる。夫は「心配ない!」と何度も強調して妻の心配を打ち消そうとするが、自分の不安を否定したいという葛藤の裏返しで、そのあたりもリアルに描かれている。

 介護に疲れた夫は、ある日2人一緒に消えようかと考える。その時、妻が昔語った輝くような言葉を思い出す。「朝の光は希望の光」と。

 勇気を取り戻した夫は、妻が忘れたことのすべてを「僕が覚えていよう!」と誓い、妻の笑顔と優しさと温かさに一生分の感謝を込める。

 青少年からシニアにまで向けた大人の絵本だ。千倉書房、本体1500円。

2016年6月