「認知症110番」一人の相談者に寄り添い17年200回

「相談者に寄り添う」をモットーにした電話応対を心がける。認知症110番の相談員

 相談者に寄り添うを--モットーに24年前の1992年に開設された認知症予防財団の電話相談「認知症110番」。最近、そんな本財団の姿勢が間違っていなかったと改めて確認するようなうれしい電話が続いた。

 その電話は昨年12月中頃にかかってきた。交代で常時4人の相談員が待機する中、受話器を取ったのはベテランのSさんだ。電話とつながったパソコンの画面には200という数字が表示される。つまりこの相談者は同じ電話番号からちょうど200回目の電話をかけてきたということになる。

 2013年から導入した紙の相談記録票のデジタル(データベース)化に伴い、瞬時に相談者の過去の相談履歴が画面に表示され、相談者は家族関係や介護している対象者の様子など基本情報を一から説明することなく、また相談員は前の相談記録を読み取りながら、その日の相談にすぐ向き合うことができるようになっている。

 電話を受けたSさんだけでなく、電話してきた相談者も驚いたのが、このキリのいい200という数字だった。日本海沿いの町に暮らすMさんが義理の祖母と母という2代にわたる姑(しゅうとめ)の御世話をし、悩みの相談をかけ続けて17年がたっていた。その積み重ねが200回という数字だった。

「認知症110番」の相談内容について情報交換する相談員ら

 100歳を超えていた義理の祖母が亡くなり、ようやく肩の荷を下ろしたという思いのMさんが、その報告とお礼を兼ねてのひさしぶりの電話にSさんがこう尋ねる。「今日は何回目のお電話だと思いますか」「さあ、100回は超えてますよねえ」「実は今日がちょうど200回目です」

 その数字に驚いたMさんが感慨深げに話し始める。「2代の姑を抱え、どう対応したらいいか分からなかったときに、いつも助けていただいた。この電話相談のおかげで今日の私がある。介護に詳しい専門家の方が『こうしなさい』『ああしなさい』といろいろ指示される電話相談も他にありましたが、私には合いませんでした。その点『認知症110番』は私の悩みや愚痴をそっくり受け止めてくれたので電話しやすかった。私も病気を抱え、これからは御世話を受ける側。電話するのはこれでおしまいです」

ショートステイを嫌がる父を代わりに説得 感謝の寄付を

 こんな電話もかかってきた。いきなり「寄付をしたい」という女性からの電話。事情を聴いてみると、「『認知症110番』にはよく相談の電話をしています。父がショートステイに行きたがらない時は、もうどうしていいか分かりませんでした。それで相談員の方が私に代わって父を説得してくれたのです。そのおかげで父はショートステイに行ってくれました。その時父が行ってくれなければ私は死んでいたかもしれません。わずかではありますが、感謝の思いを込めて寄付をさせていただきたい」とのことだった。
 東京都内に住むというその女性はこうも話していた。「『認知症110番』は電話代がかからないフリーコールなので本来はつながりにくいはずなのに、逆に他の相談所よりもつながりやすかった。こちらはいつも相談者に寄り添うという雰囲気でそれが魅力でした。これからも相談させていただきます」

「闇夜の中の灯台」

 御紹介した二つの事例は相談者の年齢や相談内容も異なっているが、相談員が相談者に寄り添うという姿勢が受け入れられているという点は共通している。当電話相談のOBの一人は「Mさんは在宅介護の大変さを改めて再認識させられた事例です。相談員のみなさんの根気と努力には頭が下がります。チームワークも大切です。週2回とは言え、1年を通じ決まった日に必ず開いている電話相談は、実際に介護に悩んでいる人には闇夜の中の灯台に見えていたのでしょう」とエールを送っている。

 「認知症110番」

 無料の電話相談「認知症110番」は1992年に開設。月曜と木曜(祝日を除く)10時〜15時に相談を受け付けている。ソーシャルワーカー、カウンセラー、看護師、介護福祉士、臨床心理士、社会福祉士、ケアコーディネーター、そして介護経験者など熟達の相談員が対応。相談者はリピーターも多く、相談件数は2015年7月現在累計で2万2000件に達し、2017年に25周年を迎える。

 医師による「認知症相談室」の開設

 認知症予防財団と提携する順天堂大学医学部精神医学教室の医師による「認知症相談室」。相談希望者は認知症110番のフリーダイヤル(0120・654874)で予約。その後指定された時間に待機する医師に電話を入れて相談。患者を直接診察していないので、診断、投薬などの指示はできないが、認知症一般の医学的相談に回答することで本人と家族の理解を深め、不安の軽減に努めている。薬や主治医への応対に戸惑う声が寄せられている。

2016年3月