認知症で踏切事故 大和市 保険加入へ 最大で3億円賠償

 認知症の高齢者が踏切事故に遭うなどして家族が高額の損害賠償を求められる場合に備え、神奈川県大和市は賠償金として最大3億円が支払われる保険に加入することを決めた。9月の市議会に補正予算案を提案し、承認されれば11月にもスタートさせる。認知症高齢者の事故をめぐり監督義務者が責任を問われるケースが社会問題化している中、自治体が公費で保険の契約をする試みは注目される。

認知症の男性が列車にはねられて死亡したJR共和駅の事故現場付近。男性はホーム先端のフェンス扉を開けてホーム下に下りた=愛知県大府市で2016年3月1日、大竹禎之撮影

 きっかけになったのは2007年、愛知県大府市で男性(当時91歳)が東海道線の列車にはねられて死亡し、列車に遅れが生じたとして家族が、JR東海から約720万円の損害賠償を求める訴えを起こされたことだ。1、2審とも家族に支払いが命じられ、最高裁は昨年3月、JR東海の請求を棄却した。

 大和市は市内に小田急線や相鉄線、東急線の私鉄3社8駅と32カ所の踏切があることから、訴訟の行方を注意深く見守っていたことに加え、昨年9月、「認知症1万人時代に備えるまち やまと」宣言を出すなど認知症への取り組みに力を入れていたという背景があり、公費で民間保険会社と契約して対応する案にまとまった。

 もともと小学5、6年生を対象にした損害賠償補償のある自転車保険付き自転車運転免許証を発行していたという実績もあり、これがヒントになったという。

 今回の契約も監督義務者まで補償するという内容で、個人賠償責任が求められた場合、最大3億円を公費で肩代わりする。対象者が交通事故などで死亡・負傷した場合の保険にも併せて加入する。

 対象となるのは、認知症によって外を出歩く可能性があり、市などでつくる「はいかい高齢者等SOSネットワーク」に登録した高齢者。7月末現在で237人が登録している。市は初年度分の保険料など323万円を補正予算案に盛り込む。

 この保険契約については全国の自治体から問い合わせが寄せられるなど関心を集める一方、将来的には民間保険会社との契約より公的制度によるサービスの充実を求める声もあるが、同市は「現時点ではこの制度がベスト」としている。

2017年10月