お年寄り店員がにこやかに……感動の空間

注文をまちがえる料理店 発案者の小国さん 著書で紹介

小国士朗さんの「注文をまちがえる料理店」。

 「注文をまちがえるかもしれない料理店? それは絶対見てみたい!」と感じたテレビ局のディレクターが、期間限定ながら大勢の協力者を得て本物のお店を開店する夢を数年がかりで実現したお話。認知症の人がにこやかに注文を取る姿がテレビやネットでも話題になったが、その一部始終と感動の空間を発案者の小国士朗さん自身が著書「注文をまちがえる料理店」(あさ出版)で紹介している。

 夢の実現までは、数えきれないくらいほど障害があったことが書かれているが、注文を忘れたり、間違ってしまったりしても、スタッフと客の双方が「まあいいか」と感じる優しい空気さえあれば、夢は本物になる、と語っている。

 著者は2012年、認知症のグループホームを取材中、ある場面で戸惑いを感じたことを正直に告白している。買い物から料理まで認知症の人がすべてをこなす。ところが食卓には昼食の献立にあるハンバーグではなくギョーザが並んでいた。思わず「今日はハンバーグでしたよね」と言いそうになったという。介護の世界を変えようと頑張っている人の現場を取材しながら、違う料理が出てきたことにこだわるなんて恥ずかしいとすぐに思い直した。その瞬間、「注文をまちがえる料理店」の言葉が浮かんだという。

 実際の取り組みは16年になってから。当のグループホームの責任者やクラウドファンディングの専門家、外食サービスの経営者、デザイナーらの友人知人が、このアイデアを面白がり、実行委員会まで発足。17年6月に東京都内で2日間、プレオープンし、その大反響を受けて、3か月後の9月には再オープン(3日間)した。

 準備期間から2度にわたるオープンまで、関わった人たちに共通するのは、まちがえることがいけないこととは思わず、逆にまちがえることを楽しんでしまう人たちであることだ。だからこそ、注文を取りに来たはずの認知症のお年寄りスタッフが、それを忘れて昔話に花を咲かせてしまっても、その話を楽しんだり、用件を思い出そうとするスタッフに「注文を取りに来たんじゃないですか」と助け舟を出したり、お客同士工夫することで、間違ってしまったことが「解決」していく。

 ネットから広がった開店情報は世界に広がり、ノルウェーの公衆衛生協会は「この日本のアイデアは、重要な点を示しています。それは、認知症を抱えている多くの人は、周囲から受け入れられ、理解されさえすれば、普通の社会生活に参加できるのです。大切なことは、認知症の人を過小評価しないということです。多くの人が、さまざまな方法で社会に貢献することが可能なのです」とコメントしている。

 「注文をまちがえる料理店」といっても、最初からまちがいをしようとしているわけではない。できることなら、まちがわずに注文を取りたいけれど、結果としてまちがうことは、まあいいかと考えることである。

 このコンセプトを示すように、プレオープンの時はまちがいの発生は60%だったが、9月の3日間は30パーセントに半減したという。

 本でも紹介されているが、小国さんは今回の体験をさらに膨らませ「老いや障害に触れるテーマパーク」構想など新たな夢を描き始めている。

 本の中では、介護施設のサポーターら当日の開店に関わったり、お客として訪れたりした人たちの物語(体験記)のほか、試みに賛同して開店したいと考える人たちに向けに「注文をまちがえる料理店」の作り方も詳しく紹介されている。

 「注文をまちがえる料理店」(あさ出版)は本体1400円+消費税。問い合わせは電話03・3983・3225

2018年3月