トピックス

認知症ケア 国越えて――アジア各地で専門士育成

日本認知症ケア学会 超高齢化社会に対応

2017年7月、台湾であった認知症ケア専門士の認定試験

 日本認知症ケア学会(理事長・繁田雅弘東京慈恵会医大教授)は、同会が認定する「認知症ケア専門士」の資格をアジアに広めようとしている。2017年度には韓国、台湾で海外初の合格者が誕生した。19年度にはフィリピン、インドネシア、ベトナムで試験が始まる。高度な認知症ケアのできる人材を海外でも育て、出身国・地域はもちろん、国を越えて活躍してもらうことを目指している。

 認知症の人へのケアは、患者の身体状況に加え、心理、環境、来歴などを総合的に把握して尊厳を支えていくことが求められる。日本認知症ケア学会は「高度な専門性が必要」として認知症ケア専門士の認定制度を創設。3年以上の実務経験がある人を対象に05年度から筆記試験、論述と面接の2次にわたる試験を始めた。昨年9月時点で累計4万7621人が合格し、全国各地の介護施設などで働いている。

 「専門士」には合格後も指定の研修参加を義務付けるなど、専門性を維持し高めることができるようにしている。そこに目を付けたのが、フィリピンやベトナムだ。「日本のような超高齢化社会を迎える前に手を打ちたい」として、日本認知症ケア学会に「専門士制度を取り入れたい」と打診してきた。韓国など高齢化が進む国も賛同したという。同学会の側も国際貢献ができるうえ、技能実習生制度などを活用すれば日本で人材を受け入れることも可能と判断し、17年度にまずは韓国と台湾で試験を開始。初年度は韓国で20人、台湾で44人が合格した。

 アジアの国々には、15年度に発足した「国際認知症ケア連合」に加盟(現在日本を含め5カ国)してもらう。日本認知症ケア学会は同連合を通じてノウハウを各国に伝える。それぞれ福祉制度には違いがあり、状況に合わせた教科書や問題としつつ、同一の水準を保つ点に苦労するという。関係者は「試験監督が勝手に試験時間を延長してしまうようなこともあり、大変です」と苦笑している。

 日本認知症ケア学会はアジア各地で専門士の資格保持者を増やしていく考えだ。繁田理事長は「まだ高齢化が深刻でない国も大変熱心。アジア全体のケアのレベルを高めていきたい」と話している。

2018年9月