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茨城県牛久で認知症予防実証実験
高齢者がメニュー選択
企業が連携し商品持ち寄る 脳トレ、筋トレ、音楽など

 茨城県牛久市で産・官・学が連携して認知症予防モデルを探る、全国初の実証実験「『人生をカッコよく』プロジェクト」が展開されている。お年寄りに運動や脳トレーニングなど複数のメニューから好きなプログラムに興じてもらったり、軽度認知障害(MCI)の人らを早期の治療や介護支援につなげたりすることで、認知症予防に役立てることを目指す。

 主導するのは、メモリークリニックお茶の水の朝田隆院長(東京医科歯科大特任教授)だ。認知症専門医の朝田氏は、長年運動や脳トレの効果を研究している。しかし、特定の運動や脳トレゲームなどの「単品メニュー」では高齢者に選択肢がなく、面白く取り組めない人には効果が表れにくいのが悩みだった。

 そこで考案したのが、認知症予防に関わる商品を手掛ける複数の企業に「MCIリング」と名付けた連携の輪に加わってもらう手法。各企業はそれぞれの商品やサービスを一か所に持ち寄り、集まった高齢者に好きなものを試してもらう。認知症予防に関心を寄せてきた複数の企業が、1年前から朝田氏のもとで研究を重ねてきた。今回の企画は地域社会でMCIリングの有効性を確認するとともに、課題を洗いだすことに狙いがある。

 MCIリングには、▽ニッセイ情報テクノロジー▽夕刊フジ▽シチズン▽ネスレ日本▽島津製作所▽MCBI――が参加。1月28日から3月29日まで(平日のみ)の午後1~4時、牛久市牛久町の集会所に待機し、お年寄りに商品を提供する。商品はタブレット端末を使った脳トレや、筋トレ、音楽、美術を学べる動画、脳の血流を画像で確認できる機器など。血液検査による認知機能の確認もできる。高齢者は好きなときに訪れ、どれをいくつ試してもよい。集会場に集い、地域の人と交流してもらうことも目的の一つだ。

 プロジェクトは厚生労働省の補助事業で、牛久市、東京医科歯科大、認知症の人と家族の会茨城県支部なども加わる。同大などの「医療チーム」は参加者に複数回、認知機能が検査できるアンケートを実施し、企画の有効性を検証する。身体が弱まり要介護手前の「フレイル」となっている人の早期発見、改善にも努める。また、行政や家族の会ら「福祉チーム」は、当事者からの相談を受けるほか、企画に参加しない人についてはその理由を調べる。

 初日の1月28日は300人近い人が集まり、興味を持ったものに挑戦した。近くに住む菅野康子さん(67)は「いつでも誰でもいいので、参加できました。いろいろなサービスを体験してみたい」と話す。

 朝田氏はMCIリングへの参加企業・団体を広げ、全国各地で実証をする意向。

「各商品・サービスが相乗的な効果を生む連携の在り方を探索し、全国の自治体が参考になる新たなた認知症予防モデルをつくりたい」と語っている。

2019年2月