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認知症対策 全市民で負担を分担 神戸モデル始動

65歳以上に無料の検査・診断 保険加入 加害事故に賠償金

 認知症の早期診断と、認知症の人が起こした事故による被害者救済をセットとした神戸市による全国初の認知症対策「神戸モデル」が始動した。まずは1月28日に65歳以上の市民を対象とした無料の認知症の検査・診断がスタート、4月からは認知症と診断された人の保険料を市が負担し、最高2億円の損害賠償金が支給される制度も始まる。

 神戸市は昨年4月、「神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例」を施行した。2016年9月にあったG7保健大臣会合で、認知症対策を盛り込んだ「神戸宣言」を採択したことを受けた動きだ。神戸モデルは同条例を踏まえ、策定された。

 愛知県大府市では、認知症の人が列車にはねられ、JR東海が遺族に損害賠償を求めて訴訟を起こした。最高裁は16年にJR側の請求を棄却したものの、家族が監督責任を問われるケースも起こり得る点を指摘した。認知症の人が火災を起こしたり、他人のものを壊したりしたことでトラブルになるケースもある。家族が損害賠償問題に直面する事例は少なくない。

 自治体による認知症事故の救済策としては、神奈川県大和市が17年、登録した認知症の高齢者を対象に、市が公費で保険料負担する制度を全国で初めて設けている。神戸モデルは損害賠償に認知症の早期診断も組み合わせて保険加入者を増やすことにした。認知症と診断された人はすべて保険に加入してもらい、保険会社は最高2億円の損害賠償金を支払う。保険未加入の人が起こした事故でも、被害者が市民の場合は最高3000円の見舞金を支給するなど救済範囲を広げている。

 想定する所要財源は3億円。市民税に年間一律400円を上乗せし、賄う。認知症だけを対象としたことには異論もあったが、今後爆発的に増える認知症について、全市民で負担を分かち合うことで市議会も折り合った。3年間試行し、続けるか否かを検証するとしている。

2019年3月