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注文をまちがえる料理店 イベント各地で 厚労省で臨時「開店」

「根本厚労相(左)と小泉部会長を接客するおばあちゃんたち」

 認知症の人がレストランで接客をする催しが各地に広がっている。3月4、5日の両日は、「注文をまちがえる料理店」が東京・霞が関の厚生労働省内の中華料理店で臨時にオープンした。イベントに携わっている人たちは、スタッフが注文や配膳を間違えても、「まっ、いいか」とおおらかな気持ちで受け入れる寛容な心の広がりが、認知症になっても安心して暮らせる社会づくりにつながる、との思いを共有している。

 きっかけは、NHKディレクターだった小国士朗さんが、2012年に認知症当事者が暮らすグループホームの取材に訪れたことだ。入居者が手作りしてくれる食事の時間。メニューはハンバーグと聞いていたのに、出てきたのは餃子だった。それでも、入居者の人たちはまるで気にせず食べている。「そうか、受け入れてしまえばいいんだ」。小国さんは介護に携わる人らと実行委員会を結成し、17年9月、東京・港区のレストランを会場に認知症の人が接客をするイベント開催にこぎつけた。

 厚労省での臨時開店は、小国さんが理事を務める一般社団法人「注文をまちがえる料理店」と、65〜91歳の認知症の人7人が雇用契約を結び、厚労省に「開店」を打診した。7人はどのテーブルに運ぶのかを何度も確認し、「おいしいですか」と満面の笑みで客の厚労省職員をもてなした。おばあちゃんの1人は根本匠厚労相と交互にマッサージをし合うなどし、周囲にも優しい笑顔が広がった。

 接客係の70歳代の女性は「うまくできた気がします」とニッコリ。注文通りに油そばが届いた、自民党の小泉進次郎厚労部会長は「注文通りで残念と思ったほど。寛容になりますね」。根本厚労相も「心のこもった接客だった。認知症の皆さんと住みよい地域作りに取り組みたい」と話した。

 料理店のマークは、間違えたスタッフが「てへっ」と笑い、「ぺろっ」と舌を出す様子を漫画化した「てへぺろ」だ。同法人には「私の街でもやりたい」との問い合わせが相次ぎ、「てへぺろの輪」はこれまで全国15か所以上と、海外は韓国、英国に広がっている。2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせてイベントを練っているといい、小国さんは「日本から世界に発信していきたい」と意気込んでいる。

2019年3月