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アルツハイマー病因蛋白の毒性メカニズムを解明/昭和大小野教授ら

 昭和大学医学部(東京・品川区)の小野賢二郎・脳神経内科学部門教授と辻まゆみ薬理科学研究センター教授は5月、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβ蛋白(Aβ)が凝集する過程の「プロトフィブリル」が、脳神経細胞膜を傷めることで毒性を発揮することを突き止めた。アルツハイマー病の根本治療薬の開発に応用できる可能性がある。研究結果は米国実験生物学会連合学術誌「The FASEB Journal」オンライン版に掲載された。

 Aβは20年程度かけて凝集しながら脳内にたまっていく。まずはAβの単量体が2個以上結合した低分子オリゴマーとなり、さらに多くが集まってプロトフィブリルなど の高分子オリゴマー化する。凝集が進むと最後は線維状となり、線維を成分とする老人斑(脳のシミ)が形成される。こうした経緯で作られた線維状のAβ集合体など が、神経細胞を損傷するとみられてきた。

 しかし、近年はAβが線維状になる前段階のオリゴマーが、アルツハイマー病発症により大きく影響している可能性が指摘されている。

 小野教授らは、高分子オリゴマーが脳神経細胞膜に穴を開け、カルシウムを流入させて神経毒性を誘発すること、この神経毒が細胞内のカルシウム調節異常や、神経細 胞同士をつないで情報を伝達するシナプスに障害を引き起こすことなどを解明した。

 これにより、Aβの凝集過程で早期に凝集を制御できれば、アルツハイマー病の根本治療につながる可能性が出てきた。

 小野教授は認知症予防財団の評議員を務めている。

2019年5月