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長谷川和夫さん 財団評議員を退任

認知症研究の第一人者 「認知症」を公表

長谷川和夫さん

 認知症予防財団の前身、ぼけ予防協会発足の1990年から同協会・財団の評議員を務めてきた長谷川和夫・認知症介護研究・研修東京名誉センター長(90)が6月末、評議員を退いた。認知症医療の第一人者ながら、一昨年には認知症になったことを公表している。とはいえ、退任は健康を気遣う家族の意向で、長谷川さん自身はお元気だ。認知症の人の「その人らしさ」を最も大切にしてきた温かい眼差しにも変わりはない。

 「午後6時か。まだやっているな」。そう考えてなじみの散髪店に行くと、閉まっていた。行きつけの喫茶店も開いていない。おかしいと思ったら、まだ午前6時だった。「時間の観念が薄くなってきてね。しょっちゅうじゃないけれど、(症状が)進んだかな」。長谷川さんはそう言って、苦笑いする。

 7月の初めには近所で転び、鼻を強打した。車椅子に乗るようにもなった。それでも月に1、2度は出勤し、後進への助言を続けている。認知症を公表したのは、専門医である自分が講演などで自らの状況を語ることにより、普通に生活できていることを伝えられると考えたためだ。医師ばかりでなく、当事者の心に寄り添うケア職育成に尽力した長谷川さんは今、かつて認知症の人に勧めていたデイケアに自らも通う。職員から学ぶことは多いという。

 2025年には認知症の人が700万人を超すとされる。地域で支えることがますます求められるなか、これからは子どもへの啓発が重要になると話す。「だれもが認知症になり得る時代。大人の言うことには抵抗しても、子どもに言われたら聞くという人は多い。子どもに認知症のことを知ってもらうのは大事ですね」。

 長谷川和夫(はせがわ・かずお)1929年生まれ。聖マリアンナ大学長、理事長を経て認知症ケアの人材育成のために新設された認知症介護研究・研修東京センター長に就任した。100から7ずつ引いていく引き算など9項目の質問で認知機能を調べる「長谷川式簡易知能評価スケール」の発案者。17年10月、嗜銀顆粒性認知症と診断されたことを公表した。

2019年9月