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介護保険法改正案 国が素案づくり

介護費抑制どこまで

 来年の通常国会に提出する介護保険法改正案について、厚生労働省は素案づくりに着手した。年内に結論をまとめる考えだ。月ごとの自己負担に上限を設けている仕組みに関し、収入が一定以上の人の限度額を引き上げることや、介護保険の利用計画「ケアプラン」作成に自己負担を導入するかどうかなどが焦点となる。

 厚労省が検討している主な見直し案は、㈰保険料を負担し始める年齢(現在40歳)の引き下げ㈪比較的収入が多く、サービス利用時の自己負担割合(原則1割)が2〜3割となる所得層の拡大㈫ケアプラン作成に自己負担の導入㈬要介護1、2の人の生活援助サービス(家事など)を市町村事業に移行㈭月の自己負担に上限を設けている「高額介護サービス費」の限度額引き上げ——などだ。同省はこれらを「検討事項」として厚労相の諮問機関、社会保障審議会介護保険部会に示し、秋口から本格的な議論を始めた。

 2019年度の介護費は予算ベースで11・7兆円。00年度の制度発足時に比べ3倍に膨らんだ。65歳以上の人の平均月額保険料は5896円と当初より倍増している。厚労省は
40年の介護費が25・8兆円に達すると推計しており、費用の抑制に躍起となっている。

 それでも、素案をまとめる12月末までには時間が足りない。消費増税直後とあって、保険料を払い始める年齢の引き下げや自己負担割合のアップといった国民に強い痛みを強いる見直し案は、今後に先送りされる気配が濃厚だ。

 こうしたなか、厚労省が「比較的手を付けやすい」と考えているのが、在宅でサービスを受ける人のケアプラン作成時に、自己負担を求める案だ。介護保険を使う人は、月に1度ケアプランを作る必要がある。自分で作ってもよいが、複雑なため専門家のケアマネージャーに委ねる人が多い。作成費込みのケアマネジメント費は最高で1万3000円程度。ただし、利用者の自己負担はゼロとなっている。

 ケアプランは介護保険を使う際の「入口」となる。制度設計時、利用者に入口段階で負担を求めれば、制度普及の障害になると判断されたようだ。それでも17年度のケアプラン作成費などは4885億円と、介護費の5%弱を占めている。

 ケアプラン作成時の自己負担導入は、これまでも度々議論されては尻すぼみとなってきた。しかし発足から20年近くたって介護保険も定着し、そろそろ負担を求める方向に舵を切ってもいい、として改めて検討項目に挙げられた。ただ、「『自己負担をするのだから、プランに希望するサービスをもっと入れろ』と言う人が増え、給付費抑制につながらないのでは」との懸念も出ている。

 このほか厚労省は、月ごとの自己負担限度額のうち、年収約383万円以上の高齢者に適用されて金額(4万4000円)を引き上げ、年収に応じて段階的に負担を重くする方向で検討している。

 負担が増える見直しについて、労組の連合や認知症の人と家族の会などは「利用の手控えにつながる」と強く反発している。

 ■介護保険の制度改革を巡る主な検討項目

 ・サービス利用時の自己負担(原則1割)について、比較的収入が高く2〜3割に設定されている所得層の拡大
 ・介護施設の大部屋に入居している人から「室料」を徴収
 ・要介護1、2の人への生活援助サービスを市町村事業に移行
 ・保険料負担開始年齢(40歳)の引き下げ
 ・ケアプラン作成時の自己負担導入
 ・「高額介護サービス費」の月の限度額引き上げ

2019年10月