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脳寿命を延ばそう

公開講座「認知症予防の最前線」開催

 順天堂大学と東急不動産ホールディングスによる産学連携プロジェクト「ハッピー・エイジング・フォーラム(HAF)」主催の公開講座「認知症予防の最前線」(後援・毎日新聞社)が12月13日、東京都千代田区の日比谷図書文化館であり、認知症予防財団会長の新井平伊・アルツクリニック東京院長(順天堂大学名誉教授)が基調講演をした。約200人が詰めかけ、最先端の認知症診断技術や予防法、認知症になってもその人らしく生活できる工夫などに聞き入った。

 HAFは健康寿命を延ばすことを目標に掲げ、昨年発足した。挨拶した佐藤信紘HAF共同代表(学校法人順天堂理事)は、HAF設立の狙いについて「学問的に勉強している健康長寿、認知症のことを、社会一般の方々にお伝えしようと考えた」などと話した。

 新井氏は「認知症 最新の早期診断・治療法から予防まで」と題して話し、「脳の寿命を延ばす」ことが大きなテーマだと紹介した。予防の基礎、中級編として、バランスのとれた食事や生活習慣病をきちんと治療することなどを挙げたあと、軽度認知障害(MCI)や、自分だけが異常に気づいている主観的な認知機能の低下(SCI)段階で症状の原因を見極めることの重要性を指摘した。

 さらに新井氏は、脳の萎縮をみるMRIによる脳ドッグでは、認知症の超早期発見ができないとし、自身のクリニックに導入した「アミロイドペット検査」について説明した。同検査は、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβなどを画像で確認できる。アミロイドβなどが脳神経細胞に障害を与える前に原因物質の蓄積度合いが分かるため、極めて早い段階で予防に着手できるという。世界に先駆けた手法で、新井氏は「SCIからMCIの段階に、アミロイドがたまっているか否かで作戦を立て直すのが大切。発症を5年遅らせると、社会を支える世代の認知症の方を半分にできる」と意気込みを語った。

 新井氏に続き、上智大学の松田修・総合人間科学部心理学科教授が登壇。「もの忘れとどう付きあうか 認知症の人の心を支えるには」との演題に沿い、認知症になっても、工夫や周囲の人の思いやりで日常生活や社会参加を続けていける事例を紹介した。また、ボランティアをしている人の幸福度が高いといった直近の研究事例を明かし、「認知症になっても、他者との関わり、他者のために役に立ちたいと思って行動することが、幸福感の維持、向上に繋がる可能性があるのでは」と結んだ。

 最後はシニア住宅などを展開している東急イーライフデザインの石井良明社長が、「高齢者住宅における認知症の予防と対応への取組み」との題で講演。同社の住宅では運動、栄養、交流を重視していると説明した。また要介護の人が入居する住宅では「認知症ケア指針」を策定しているとし、介護する側でなく、される側を中心に考える「パーソンセンタードケア」を実践していることを披露した。

2020年1月