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認知症本人「希望大使」に藤田和子さんら5人任命 厚生労働省

橋本副厚労相(右)から任命証を受ける春原さん(座っている左から順に、渡辺さん、柿下さん、藤田さん、丹野さん)

 厚生労働省は1月20日、認知症になっても前を向いて暮らしていることを本人に発信してもらう「希望大使」の任命式を東京都内で開いた。大使には看護師として働いていた45歳の時に若年性アルツハイマー病と診断された鳥取市の藤田和子さん(58)ら男女5人が選ばれ、出会いの大切さや、自ら発信することで自信を持てるようになり、人生が豊かになった、などと語った。

 認知症の人の意志が尊重され地域で自分らしく暮らせるようになるには、認知症に対する社会の理解を深める必要がある――。そう考える厚労省は、よりよく生きる姿を示してもらえる認知症の当事者に「希望大使」に就任してもらい、本人の発信力を借りて普及啓発を進めていくことにした。政府は昨年6月に策定した認知症対策の新大綱に「認知症の本人の発信を支援」と明記している。

 この日大使に任命されたのは藤田さんのほか、仙台市の丹野智文さん(45)、東京都品川区の柿下秋男さん(66)、長野県上田市の春原治子さん(76)、香川県観音寺市の渡辺康平さん(77)。それぞれ橋本岳副厚労相から任命証を受け取った。

 その後、全員がスピーチに立ち、日本認知症本人ワーキンググループの代表でもある藤田さんは「認知症には絶望的というイメージが根強く残っている。その最大のバリアを取り払いたい」と話し、認知症になっても元気に楽しく生きていけると伝えたい」と決意を述べた。当事者の相談を受ける「おれんじドア」に取り組む丹野さんは「一歩踏み出し、仲間をたくさん作ること、工夫することがどれだけ大切か知ってもらいたい」と訴え、教職を退職後、小学校の授業支援などをしてきた春原さんは「私は私、変わらない。前向きに活動してきたし、これからもしていきたい」と話した。また、地域で見守り活動などをしている柿下さんは「自らをアピールし、発信を積み上げていくことが大事。自分のいい所を伸ばそうと自信が出てくる」と述べ、病院で非常勤相談員をしている渡辺さんは「話すことで自信が持てるし、自分の中では達成 感を感じることができる」と強調した。

  任命式では、現役官僚だった1995年、46歳で認知症と診断され、日々の体験を世界に発信している先駆者、クリスティーン・ブライデン氏(オーストラリア在住)からもビデオメッセージが寄せられた。

2020年1月