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認知症基本法案−−当事者、支援者らの思い

「人権」「備え」重視を 国会内で院内集会

与野党の国会議員に要望書を渡す認知症の人と家族の会の鈴木代表(左から6人目)

 認知症の当事者や支援者らが2月6日、国会内で「認知症基本法について考える院内集会」を開いた。国会に提出されている認知症基本法案について、認知症の人が希望を持って暮らしていけるようになるのを後押しする法案に修正されることを願い、当事者らが与野党の衆参国会議員や医療・介護関係者ら約150人を前に思いのたけを伝える場となった。

 認知症基本法案は、国の認知症施策の理念をうたうものだ。いまの法案は、自民、公明両与党が昨年6月に議員提案の形で提出した。政府の新たな認知症施策推進大綱に沿った内容で、目的を「認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図る」などとしている。

 ただ、集会を開いた「認知症関係当事者・支援者連絡会議」や「日本認知症本人ワーキンググループ」のメンバーには「よりよいものにしたい」との思いが強い。認知症になっても当たり前に安心して暮らせるよう、当事者の人権尊重を求めているにもかかわらず、法案には「人権」の言葉がない。また、「予防」よりは「備え」を重視することを望んでいるのに、法案は政府の大綱同様、「予防」と「共生」を並立させた内容になっているためだ。また、超党派ではなく、与党単独提出の法案である点も「広がり」という面で不安視している。

 集会では冒頭に同連絡会議を構成する「認知症の人と家族の会」の鈴木森夫代表が「野党もしっかり加わり超党派で法案を作り上げてほしい、との思いから開催した」とあいさつした。続いて日本認知症本人ワーキンググループの藤田和子代表が「認知症の本人も家族も希望を持って前を向きたい。施策の対象者と見るのではなく、よりよい社会、地域をつくる仲間と考えてほしい」と訴えた。

 現行の法案は国会の審議日程が窮屈なこともあり、まだ一度も審議されていないままだ。鈴木氏らは集会で、出席した与野党の国会議員に基本法の早期成立と法案に当事者や家族の意見を反映させるよう求めた要望書を提出した。これを受け、自民党の田村憲久政調会長代理は「皆さんの話を聞きながら法案を作ったつもりだったが、『人権』が抜けている。『予防』という言葉が酷だとの声もある。提出した法案にこだわらず、超党派でいいものにしたい」と踏み込んだ。また立憲民主党の西村智奈美元副厚労相は「ご要望はその通りだと思う。誰でも認知症になる可能性はあり、私たちも議論をさせていただきたい」と語った。

■国会に提出されている認知症基本法案の概要
【目的】認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図る
【基本理念】本人・家族の意向尊重、国民の理解・共生社会、本人・家族等への支援など
【法制上の措置】9月21日を「認知症の日」に
【認知症施策推進基本計画等】政府による策定義務、都道府県・市町村による策定努力義務
【基本的施策】認知症教育の推進▽バリアフリー化▽社会参加の機会の確保▽予防推進▽相談体制の整備等

2020年3月