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認知症予防財団設立30年 長寿健康社会 目指して

 認知症予防財団は今年、設立30周年を迎えました。1990年、前身の「財団法人ぼけ予防協会」として発足した当時、国内の認知症の方は約80万人でした。それが平均寿命の延びとともに近年は約462万人(2012年時点)へと急増し、「団塊の世代」が75歳以上となる25年には約700万人に達すると推計されています。「人生100年時代」の幕が開くなか、当財団はメーンの電話相談などさまざまな事業をより充実させ、「豊かで明るい希望に満ちた長寿社会」の構築を目指します。

 前身のぼけ予防協会は90年春、毎日新聞の創刊120周年記念事業として誕生しました。2009年7月には名称を「認知症予防財団」に改め、翌10年、公益財団法人に移行しました。旧協会発足当時はまだ認知症という言葉すらなく、「病気である」という認識も広まっていませんでした。超高齢化社会の到来を見据えて認知症の治療や予防、介護福祉に関する調査研究を通じて、成果を広く社会に還元するというのが協会設立の目的でしたが、認知症が喫緊の社会的課題となった今、多方面から「先見の明があった」と評価されています。

 無料の電話相談「認知症110番」は92年に始めました。協会設立直後から各地でシンポジウムを開くうち、「足を運べる人は幸せだ。来たくとも24時間介護の手を離せない人がいる」という参加者の発言があったことがきっかけです。専門家をそろえた組織的な電話相談は全国初でした。認知症への関心の高まりとともに相談件数も伸び、20年3月末時点で約2万8000件に達しています。

 電話相談、啓発のほか、「新時代」の発行、調査研究の4つが当財団の主要事業です。啓発事業に関しては「認知症の早期発見と予防の意義」などのテーマで60回近いシンポジウムを開き、また「認知症ハンドブック」などの書物を刊行してきました。調査研究では「認知症のBPSD(行動・心理症状)に対する医療と介護の実態調査」など、専門家の協力を得て数々の事業を手掛けています。

 30年の節目の今年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、計画していた事業が中止や延期を余儀なくされています。それでも3月末から休止していた「認知症110番」は、6月に再開することができました。今後、一歩ずつ日常を取り戻し、長寿健康社会の実現に向けてさらに活動範囲を広げていきます。

 ◎新井平伊・認知症予防財団会長(順天堂大名誉教授)コメント

 私は初代の齋藤英四郎経団連会長(当時)から数えて、4代目の会長となります。この30年間の各界からのご支援にまずは感謝申し上げます。

 財団の歩みは、急速に進む高齢化社会とともにありました。この間、電話相談などを通じて認知症の方や介護者に寄り添うことを重視してきましたが、この先も「公益」の名に恥じぬよう、「認知症になっても安心な社会」づくりに一層貢献していきます。

 認知症、とりわけアルツハイマーは世界でも最先端の研究が進み、早期治療によって維持できるステージを高められるようになってきました。予防面も、発症をさせない一次予防こそまだ難しいですが、発症を遅らせる2次予防、進行を遅らせる3次予防はかなり可能になってきています。脳や健康寿命をいかに延ばしていくかを重要テーマとして調査研究を重ね、その成果をシンポジウムや刊行物を通じて発信することによって社会に還元していきます。

2020年7月