トピックス

介護報酬21年度改定/認知症対策を強化

 介護事業者に支払われる介護報酬の2021年度改定(0・7%増)の骨格が固まった。認知症関連では、妄想や徘徊といった利用者の行動心理症状(BPSD)に対する各事業者の介護力を「見える化」するため、すべての介護施設を対象に職員の研修受講状況などを公表する。このほか、事業者には無資格の介護職員に認知症の基礎知識を学ぶ研修を受けさせることを義務づけるなどし、認知症への対応力向上を図る。政府は1月末にも決定し、4月から適用する。

 各市区町村は、介護保険法に基づいて3年に1度「介護事業計画」を策定し、それを賄うための保険料水準を決める。次期計画期間は2021〜23年度で、市区町村は3年に1度の介護報酬改定を踏まえて同計画を定める。

 厚生労働省は21年度改定の基本的な視点として、①感染症や災害への対応力強化②地域包括ケアシステムの推進③自立支援・重度化防止④介護人材の確保・介護現場の革新⑤制度の安定性・持続可能性の確保ーーを挙げている。

 ②の地域包括ケアシステム推進の関連では、認知症対策の強化を打ち出した。利用者が施設のBPSD対応力を見極められるよう、全介護施設の職員の研修受講状況などをインターネットで公表する。さらに、BPSDが認められる人を緊急に受け入れた施設へ支払われる加算の対象に、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護を加える。

 施設の中には認知症の人への接し方を知らない職員がいるところもある。そこで介護事業者に3年の猶予期間を設けたうえで、介護に直接携わりながら介護・福祉系の資格を持たない職員が認知症基礎研修(6時間)を受講できる環境を整えることを義務づける。

 介護する家族らの負担軽減策として、認知症の人が共同生活する「グループホーム」の緊急ショートステイ(短期宿泊)の受け入れ上限期間を延長する。原則は今と同じ7日だが、やむを得ない事情がある場合は最長?日とする。受け入れ人数も「1事業所1人」から「(事業所内の)1ユニット(5〜9人)1人」に増やす。

 手厚いケアを評価する「認知症専門ケア加算」は現在、施設系サービスのみが対象となっている。「認知症介護指導者養成研修修了者の配置」との要件もあり、算定のハードルが高い。同加算を確保できる施設を増やすため、訪問系サービスも加算対象としたうえで、認知症看護認定看護師らを同研修修了者とみなす。

 21年度改定は、災害や新型コロナウイルスの感染拡大に対応したことが特徴だ。介護事業者には緊急時を想定した業務継続計画の策定や訓練を義務づけ、感染症や災害が発生しても必要なサービスを続けられることを目指す。また、利用者数に応じて報酬が決まる通所介護事業所は感染症などで利用者が減ると減収に直結する。このため、利用手控えが起きても大幅に報酬が減らないようにする。

 高齢化に伴う「多死社会」の到来を見据え、みとり対応を強化する。訪問介護は2時間以上間隔を空けて訪れないと報酬目当ての「頻回」とみなされて報酬をカットされる。しかし、みとり対応では頻繁に訪れる必要があるため、2時間未満の間に訪れても減収とならないようにする。

主な介護報酬改定の内容

【感染症・災害対策】

・事業者に業務継続計画の策定や訓練を義務付け
・利用者が減った施設の減収を緩和

【認知症対策】

・訪問系サービスも認知症専門ケア加算の対象に

・認知症看護認定看護師、老人看護専門看護師、精神看護専門看護師の配置を同加算の対象要件に
・全介護施設のBPSD対応状況(職員の研修受講状況など)を公表
・小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護もBPSD加算の対象に
・無資格の介護職員に認知症基礎研修の受講を義務づけ
・グループホームの緊急受け入れ期間の上限を7日から14日に。受け入れは「1ユニット1人」に増員

【その他】

・長期入院患者を受け入れる介護医療院に加算を新設
・オンラインで服薬指導した薬剤師に報酬を算定
・訪問介護でみとり対応をする場合、頻回訪問による減収を緩和

2020年12月