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「認知症110番」の継続に温かいご支援を

寄り添って30年 無料の電話相談

 私たち公益財団法人「認知症予防財団」の無料の電話相談「認知症110番」が財政難によって存続の危機を迎えています。介護に悩む人、認知症に不安を感じる人たちの心に「希望の灯」をともしてきた「認知症110番」を続けられるよう、財団は11月1日(月)よりインターネットを通じた募金、クラウドファンディングに挑戦します。第1段階の目標金額を750万円とし、来年1月14日(金)まで受け付けます。ご寄付や情報拡散など、多くの方々のご支援をよろしくお願いいたします。

 財団は1992年より、月曜と木曜の10〜15時にフリーダイヤルの「認知症110番」(0120・65・4874 ろうご・しんぱいなし)を開設し、以来約30年に渡って延べ約3万人の方のお悩みに向き合ってきました。

 在籍している相談員は看護、介護、心理の専門家ら豊富な経験を持つ23人。毎回交代で4人ずつ出勤し、相談の電話をお待ちしています。長年の実績を評価され、2019年度より厚生労働省の後援を受けています。順天堂大学と提携し、予約のうえ同大医学部精神医学講座の医師に直接電話できる仕組みも整えています。

 介護をしている方の中には、外出すらままならない人もいます。悩みを抱えていても相談機関へ出向くことが難しい人、対面では話しにくい人、匿名性を求める人……「認知症110番」はこの30年間、こうした方々の支えとなってきました。最も心がけているのは「相談者に寄り添う」こと。「無理をなさらないで」「自分の暮らしを大切になさってくださいね」。受話器の向こうの声にじっくり耳を傾けて相手を温かく包み込む相談員たちには、長年の介護を乗り切った多くの相談者さんから感謝の声が届いています。

 ただ、長引く景気低迷により15年には資金面でのサポートをお願いしていた協賛企業が撤退しました。以降、資金繰りと経費節減に奔走してどうにか電話相談を続けてきたものの、毎年財団全体で1500万円前後の赤字が出ています。21年度は日本財団の単年度の助成を得て一息つくことができましたが、このままではあと数年で電話相談を続けられなくなる状況に追い込まれています。

 今後、高齢化に伴って認知症の人は急増すると見込まれています。悩みを抱える方もさらに増えるでしょう。これからという大切な時期に、お金の問題で「認知症110番」の灯を消してしまうのは無念でなりません。何としても続けていかなければと考え、ご賛同いただける方々のお力添えを得られるようクラウドファンディングに乗り出すことにしました。

 ご関心のある方は財団ホームページか次のURLまでアクセスしてください。
 https://readyfor.jp/projects/ninchishou110

 なお、クラウドファンディングとは別に、従来通り郵便振替で「財団法人認知症予防財団」(口座番号00120・0・551670)宛てに直接お振り込みいただくことも可能です。

 私たちは公益財団法人ですので、ご寄付をいただくと所得税、法人税等の控除の対象となります。

 どうか温かいご支援をよろしくお願いいたします。

「存続へ支援を」

 「認知症110番」の運営資金をまかなうためのクラウドファンディング実施に際し、認知症予防財団会長の新井平伊・アルツクリニック東京院長(順天堂大名誉教授)は今後とも認知症の根絶は難しいとして相談窓口の必要性を訴え、寄付への協力を呼びかけている。また賛同してくださる方々より応援のコメントが届いている。

ご支援のお願い

認知症予防財団会長 新井平伊

 認知症予防財団の主力事業は、1992年から開催している無料の電話相談「認知症110番」です。これまでに約3万件の相談に応じ、介護に悩む方、認知症を心配する方々のよりどころとなってまいりました。医療相談を希望する人は順天堂大の医師に相談できるシステムも整えています。

 しかし、近年の長引く低成長によって運営資金の調達が困難になり、存続が危うくなっています。このままでは電話相談事業は近いうちに行き詰まり、休止せざるを得ない状況に追い込まれています。

 米国で認知症の新薬が仮承認され、治療への期待が高まっています。しかし、今後いかに優れた薬剤が開発されたとしてもアルツハイマー病を完全に予防したり、根絶したりすることはできないでしょう。認知症の相談窓口は今後とも必要不可欠です。

 ぜひとも皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

 

<応援コメント>

繁田雅弘・東京慈恵会医科大学精神医学講座教授

 認知症予防財団の無料の電話相談「認知症110番」が存続の危機を迎えていることに、大変に心を痛めています。家族や親戚の人の介護でストレスを抱える方にとっては、変わってゆくかけがえのない家族に抱く複雑な受け入れがたい想いを受け止める機会が大変に重要です。介護をする側がつらいおもいを受け止めてもらうことで、介護する自分を冷静に振り返ったり、想像を超える言動を少しでも受け止められたりできるようになる可能性があります。

 また認知症を心配する人には、不安や悔しさ、情けなさを受け止め、意志も感情もある一人の人間として対応することも必要です。この「認知症110番」は介護のテクニック論を伝えることよりはむしろ、相談者の想いに静かに耳を傾け、徹底して寄り添う姿勢を貫いている貴重な相談窓口です。認知症医療や介護サービスでは行うことのできない支援を提供しています。閉じてしまうことの社会的損失は大きく、多くの方のご支援をお願いする次第です。

 

大野教子・公益社団法人 認知症の人と家族の会 東京都支部代表

 認知症予防財団の事業のひとつに電話相談「認知症110番」があります。「認知症110番」の特徴は、相談員が医療や介護の専門職であることと、予約制で順天堂大学医学部精神医学講座の医師に電話で相談できることで、この30年間、全国の介護家族を力づけてきました。

 振り返りますと、私ども家族の会本部の代表(当時)は1990年の認知症予防財団創設時に財団評議員となっておりました。また92年から9年間、東京都支部の世話人4人が月1回、認知症110番の相談員として参加し、私も最後の1年間、携わっておりました。改めて財団とのつながりを感じております。介護家族にとって「一歩前に踏み出す勇気を得られる相談先」の存在は大きく、同じように電話相談を続けている仲間として、「認知症110番」の存続を切に願っております。

 

山本 朋史・元週刊朝日編集委員

フリージャーナリスト。著書『ボケてたまるか』『認知症が止まった!?』(朝日新聞出版)で、軽度認知障害を克服した自身の体験を紹介

 高齢になって物忘れがひどくなると誰もが認知症ではないかと不安になります。でも人には知られたくない。認知症110番はそんな人たちの救いの電話です。

 私はMCI(軽度認知障害)の段階で大学病院で診察を受け、認知力アップデイケアに通い現在は症状が回復しました。仲間の励ましとスタッフの指導が力になりました。困った時の救いの声は大きな力になります。これからも認知症110番のアドバイスがみんなの心の支えになってほしいと思っています。

2021年11月