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ヘアや化粧… 山野学苑NPOが訪問理美容/おしゃれ楽しんで

 

訪問理美容サービスを受けるお年寄り

 山野美容芸術短期大学や山野美容専門学校などを運営する学校法人山野学苑(東京都渋谷区、山野愛子ジェーン理事長)は、自ら設立したNPO法人を通じて介護施設や高齢者の自宅、障害者施設などに理美容師を派遣し、介護を必要とする人にもヘアや化粧、ネイルのおしゃれを楽しんでもらう「訪問理美容」に力を入れている。少子高齢化によって理美容室を訪れる人が減るなか、「あらゆる人に美容を」という理念に基づき、要介護の人を理解した美容サービスのできる理美容師を増やしていく意向だ。

 山野学苑は1999年、一般社団法人日本美容福祉学会を設立するとともに、同短大に美容福祉学科を創設して活動の幅を福祉分野にも広げた。その後、同学科は廃止したものの、短大、専門学校の学生には寝たきりの人や車いすの人、認知症の人への美容サービス提供時の視点を教育している。また「美容福祉技術講習」の公開講座を開いてきたほか、2002年7月には訪問サービスの提供を主目的としたNPO法人「全国介護理美容福祉協会」を設立した。

 背景には、少子高齢化に伴って理美容室を訪れる人が減少していることがある。業界団体の調査によると、10~60代女性の美容室の平均利用回数(1年間)は、09年が5・3回だったのに対し19年は4・3回と大きく減った。ただし、60代の人(5・4回)など年配の世代は比較的安定しており、理美容室を訪れることは難しくとも訪問理美容を歓迎するお年寄りは一定数いると判断した。

 美容は自立支援や生活の質を高めていく上でも重要で、福祉との関連性が強いと指摘されている。こうした認識はじわじわ広がり始めており、同NPO協会が組織する訪問理美容に取り組む登録理美容師は10年が709人だったのに対し、21年3月には1429人へと倍増した。美容師全体(約53万人)の中ではまだ少数派ながら、全国各地で地域に貢献している。東京都杉並区を中心に活動する「訪問健美理美容・すぎなみ」は、15年4月に登録理美容師のチームとして発足。施設や高齢者の自宅を訪れ、訪問美容や美容講座を積み重ねてきた。今も10人が活動し、訪問理美容のトップモデルとなるチームづくりを目指している。

 同NPO協会には、訪問理美容を経験した理美容師から「認知症で意欲を失っていた人も、きれいにしてもらうと意欲が出て顔が明るくなった」「化粧療法をした方が、あす百貨店に行くと言ってくれた」といった声が寄せられている。ネイルをしてもらった女性から「寝ているだけだけど、爪を見ているだけで楽しい気持ちになる」などと喜ばれ、やりがいを実感している人は多いという。同学苑の福島清顧問は「高齢化が進むなか、認知症になっても人間らしく過ごしていただきたい。入院している方、障害がある方でも、美容の希望に応じられるようにしたい」と話している。

 山野学苑はこのほど、アメリカ在住のアルツハイマー病の研究家、増地矢恵子氏が著した冊子「体の中から美しく―健康な〝腸内細菌叢〟を維持してアルツハイマー病を予防しよう」を発行した。冊子や訪問理美容に関する問い合わせは山野学苑・美容福祉推進室(03-3379-0153)へ。

2021年4月