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カルタで多世代交流/実践女子大生が制作、イベント

実践女子大の学生たちが作った「こどものい・ろ・は『見立てかるた』」

 実践女子大学と毎日新聞社は、同大学の学生が作った「多世代交流カルタ」を地域づくりに生かす社会連携事業に取り組む検討を始めた。同大学では、学生がお年寄りや子どもと手作りカルタを楽しむ催しを日野キャンパスがある東京都日野市で行っており、毎日新聞との連携によって全国各地に広げ、多世代交流を進めることを模索する。

 実践女子大は生活科学部の須賀由紀子教授が中心となり、2016年から学生による多世代交流カルタの作成を始めた。コミュニティーや少子高齢化を学ぶ現代生活学科などの学生が高齢者や子どもの思いを捉えた読み札を考え、取り札を美学美術史学科の学生などがデザインしている。読み札は「さかなさばきは手なれたもの」など、高齢者が意欲的になる表現にしている。取り札は重厚なコラージュや野菜の組み合わせで人の顔にも見える隠し絵などを取り入れ、アート性が高いものが少なくない。

 須賀教授は当初、「学生が地域社会のことを考えるきっかけになれば」という理由でカルタに着目した。地域の公民館などでお年寄りや子どもとカルタで遊ぶうち、多世代をつなぐツールとなることに気付いた。須賀教授はその効用について「異世代のことを理解し、大学生を中心に高齢者、子どもが相互につながることができる」と話す。

 現在、カルタは学生から高齢者に向けた「アートかるた」、幼児の言葉や動きを捉えた「見立てかるた」、「くらしかるた」など4種類に増えた。最新版は昨年末に完成した「相詠みかるた」。学生が昔の写真をお年寄りに見てもらうなどして思い出話を聞き取ったうえで情景を読み札にし、現代の若者の暮らしぶりを表す札と対にしている。例えば、高齢者の札は「恋人に 電話をかけるとお父さん」で、ネット交流サービス(SNS)中心の若い世代の対の札は「ときめくな 電話なんて久しぶり」といった具合だ。また、「ラッパの音 鍋を持って走り出す」という高齢者の札は、若者の札「のんびりと ベッドの上でショッピング」が対になっている。

 新型コロナウイルス感染症への対策として、オンラインでもカルタをできる仕組みも整えた。現代生活学科3年の塩川陽菜さんは「カルタがなければ出会うことのない人たちと関わることができた。コロナによって交流の大切さを強く思い、活動を途切れさせてはいけないと思うようになった」と言う。活動を中心的に担い、今春卒業した佐藤千里さんは「高齢者や子どもから大学生に向けたカルタ、高齢者と子ども双方向のカルタも作っていかないといけない。今後も地域とのかかわりを続け、交流を広めていってほしい」と後輩に思いを託している。

2021年4月