認知症の人たちの支援にかかわる4団体でつくる「認知症関係当事者・支援者連絡会議」は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会的な行動制限の影響を調べるため、当事者や家族、支援者を対象にアンケートを実施した。回答した人の32%が介護サービスの利用制限などにより「認知症の程度が進むなどの影響があった」と答えた。また、認知症以外の「心身機能の低下の状態が悪化した」という回答も全体の26%に上った。
調査をした同連絡会議は「認知症の人と家族の会」や「全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会」など4団体で構成されている。ウェブを通じて介護家族や支援者らに調査を呼びかけ、今年2〜4月に計288人から回答を得て8月に集計結果をまとめた。
認知症の人が暮らしている場所は「自宅(家族と一緒、もしくは独居)」が112人と最も多く、施設等が74人で続いた。施設等の内訳は在宅系施設33人、入所系施設27人、病院・精神科病院8人、ショートステイ6人など。
新型コロナによる影響については、認知症や心身機能の悪化を訴える声があった一方で「どちらともいえない」は19%、「変わらない」は18%だった。
ただ、支援者ごとに認知症の症状が悪化したと答えた割合をみると、介護家族は28%だったのに対し、専門職は38%と差があった。家族の場合、コロナによる面会制限などで「当事者の状況が分からない」という人も多かった一方、コロナ禍でも当事者と接触し、家族より客観視できる専門職はより影響を強く感じていることがうかがえる。
同連絡会議は、コロナ禍での介護保険サービスの利用状況についても聞いている。「利用頻度を減らした」が26%を占め、「サービスの種類を変更した」という人は11%、「利用を中止した」人も2%いた。
頻度、種類を減らしたサービスを具体的に聞いたところ、デイサービスが29%、ショートステイ10%に対し、訪問介護6%、訪問看護4%という結果だった。訪問系のサービスを減らしたという割合が高い。理由については「感染まん延により事業所が閉鎖・利用の制限が行われた」(23%)が最も多く、「認知症の人が感染するかもしれず、怖かった」(15%)、「施設から認知症の人の状況により断られた」(6」%)と続いた。
自由回答では、「(コロナの検査の結果が)陰性でも体調不良を理由にサービスを受けられず、要介護の家族を抱えて途方に暮れた」など、感染していないにもかかわらずサービスを利用できずに困ったという声が多く寄せられた。また、介護事業者からは終末期のみとり時でさえ面会制限せざるを得なかった経験を踏まえ、「人権を尊重し人間らしくみとりを迎えさせてあげたい」など、人道的観点から規制を見直すよう求める意見もあった。
今年の「第7波」では面会制限などが緩められている施設も多いものの、医療機関を中心に「全面面会禁止」のところもある。施設側も感染拡大防止の観点から多くはギリギリの接点を模索しているものの、認知症の人がこれまで利用していた介護サービスを利用できなくなると混乱したり生活リズムが乱れたりし、症状が進むことがある。調査結果を受け認知症関係当事者・支援者連絡会議は、認知症の人の介護サービスの利用制限を最小限にとどめるような対応を国に求めている。
2022年10月