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抗認知症薬レカネマブ、エーザイなどが承認申請へ

 製薬大手エーザイは、米国製薬企業のバイオジェンと共同開発したアルツハイマー病(AD)を対象とする認知症治療薬「レカネマブ」について、最終段階の臨床試験(治験)で症状の悪化を抑える効果を示したと発表した。今年度中に米国を手始めに日本、欧州の当局に承認申請し、2023年中の承認を目指す方針だ。

 レカネマブはADの原因物質とされるたんぱく質「アミロイドβ(Aβ)」が集まった凝集体を標的とする抗体医薬品。Aβの凝集体を除去し、症状の悪化を抑えることを狙う。軽度の認知症害がある早期の段階の人に注射で投与することを想定している。

 治験は国内外の約1800人を対象に1年半かけて実施した。レカネマブを投与する群と偽薬を投与する群に分け、それぞれ2週間に1度、注射した。双方について記憶力、判断力など認知症の重症度を示す指標(最も重ければ18点)の変化を調べ、比較した。

 その結果、偽薬を投与された群の指標は1・67点悪化した一方、レカネマブ投与群では1・22点の後退にとどまったという。この結果を受け、エーザイは「症状の進行を27%抑制する効果が確認された」と説明している。副作用とされる脳内浮腫の発生率は、レカネマブ投与群の方が高い傾向(12〜17%程度)にあったものの、「想定内」としている。

 ADの治療薬を巡り、エーザイとバイオジェンはレカネマブ同様の効果を狙った「アデュカヌマブ」を昨年開発し、米食品医薬品局(FDA)は条件付きで承認した。しかし効果に疑問が指摘されて普及せず、日本では昨年末に承認が見送られている。

 レカネマブはアデュカヌマブの後継的な位置づけで、米国では効果が十分証明されていない段階でも限定的に使える「迅速承認制度」による承認申請がなされている。FDAは来年早々にも結論を出す見通しだ。

 ただ、日本でレカネマブが承認されたとしても課題は残る。投与対象者は脳内にAβが蓄積している軽度の人となるが、脳内の状態を調べるには1回で数十万円かかる陽電子放射断層撮影装置(PET)などによる検査が必要で、ハードルは高い。公的医療保険制度との兼ね合いで薬価をどの程度に設定するのかも難題だ。

2022年10月