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12月13日〜17日 アルツハイマー病の夫と妻の愛憎劇「私の心にそっと触れて」上演

 アルツハイマー病になった脳神経内科医の夫と妻の関係を軸とした愛憎劇「私の心にそっと触れて 2023」の公演が12月13日〜17日まで東京都中野区の「中野ザ・ポケット」(中野3丁目22-8)である。家族の苦悩や葛藤と再生の物語を通じ、認知症になってもその人の本質は変わらず人間の核は残ることを訴えた秀作だ。

 大学付属病院の教授、清棲滋はケガが元で引退を迫られた。裕福で平穏な第二の人生を望んでいたものの、少しずつ認知機能が失われていく。それでも本人は受け入れず、介護を頑なに拒む。過去の記憶、妄想から多くの人たちとのトラブルが生じ、家族を巻き込んでいく。

 一方、夫の変調を見て見ぬふりをしてきた妻の知佳は現実を受け入れられない。滋に振り回されるうちに疲れ果て、家族はきしんでいく。しかし周囲は温かく2人を支え、夫婦はやがてつながりを取り戻す——。

 家父長制の名残で女性に偏る介護の負担にも焦点を当てている。主人公の滋役、外山誠二の圧巻の演技が見る者の心を揺さぶる。脚本は「ダム」「太平洋食堂」などで知られる嶽本あゆ美氏。初演は21年で、濃密な人間関係を描き高い評価を受けた。23年版の上演時間は2時間10分を予定している。

 全7公演で、スケジュールは次の通り

①12月13日19時②14日14時③15日14時④15日19時⑤16日13時⑥16日18時⑦17日13時

 ③は劇団朋友代表の西海真理氏、⑥はマギーズ東京代表の秋山正子氏、⑦は社会学者の上野千鶴子氏——による上演後のアフタートークもある。

 脚本の嶽本氏は作品を通じて言葉を発しなくなった人も「心の出口」を探していることを伝えたいといい、作品に込めた思いについて「認知症は介護の負担以上に、大切な人が変わってしまう哀しみこそが辛いものです。言葉が通じなくても、手を握れば温もりが通じ、一緒に笑えば笑顔が戻ります。そっと心に触れるように生きる社会になりますように」と語っている。

 チケット料金は一般前売り5500円、学生3500円、ペア割は2名で1万円。2024年1月8日〜22日には作品のオンライン配信(2500円)もある。申し込みは主催のメメントCのホームページ(https://memento-c.com/touchmyheart.html)か、希望日時、枚数、氏名、住所電話番号を記入のうえ、メール(mementocdefg@gmail.com)、ファクス(044-857-0042)へ。

2023年11月