厚生労働省は5月、65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は2060年時点で645万人となり、高齢者全体の17・7%に上るとの推計を公表した。22年時点の443万人(全体の12・3%)から200万人以上増え、5・6人に1人は認知症になる計算だ。
また認知症の手前の段階「軽度認知障害(MCI)」の人は60年に632万人に達し、全体の17・4%になると見込んでいる。22年の558万人(同15・5%)より70万人以上増加すると見ており、36年後には高齢者のおよそ3人に1人、1300万人が認知症かその手前の人ということになる。
推計の元となる調査は同省の研究班(代表者・二宮利治九州大教授)が22〜23年度、福岡県久山町など全国4地域で実施した。65歳以上の計7143人(回答者6675人)を対象に、認知症の人の割合(有病率)などを調べた。二宮教授らはこうしたデータに将来人口推計を加味して全国に落とし込み、推計人数を算出した。25年時点の認知症高齢者は471万人となり、50年にはは586万人になると予測している。
厚労省が認知症の人の推計を公表するのは15年1月以来、9年ぶり。当時は認知症の人の数について、25年は675万人、60年には850万人に急増すると見通していた。今回の推計はこの時よりそれぞれ200万人程度下回っている。理由について二宮教授は、喫煙率の低下や高血圧、糖尿病など生活習慣病の改善、日常に運動を取り入れるといった健康意識の変化により、認知機能の低下が抑えられたと分析している。
2024年6月