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「カツベン」普及へ奔走/千葉の丸山さん映画ライブ開催

丸山芳昌さん

 千葉県内で「カツベン」の普及に奔走している人がいる。無声映画に活動写真弁士(活弁士)による語りや生演奏をつける「活弁映画」にほれ込んだ同県四街道市の丸山芳昌さん(64)は「カツベン映画普及会」をつくり、2018年からこれまで5回、活弁映画ライブを開いてきた。

 オールドファンは昔の活気に触れ、幕あいには舞台に上がって名セリフにも挑戦できる。よき時代を思い出し、古い映画を見て語る、声優のような新たな体験もできるとあって、丸山さんは「認知症予防にも役立つ」と確信しているという。

 4月20日午後、千葉市中央区の市生涯学習センターであった「活弁映画ライブ第5弾〜赤城の山も今宵を限り〜」には、50〜80歳代の中高年を中心に約40人が足を運んだ。この日上映されたのは、チャップリンの「大番頭」やチャンバラ映画「血煙り荒神山」など5作品。プロの活弁士で文部大臣賞も受賞した麻生八咫(やた)さん(72)と実の娘で一番弟子の子八咫さん(38)らがコミカルな表情を交え、1人で何役もこなしながら大きな身ぶりでセリフを語り、聴衆は大正、昭和レトロの世界に浸った。

麻生八咫(やた)さん

 観客も実体験できる「活弁体験ワークショップ」には小学4年の女児や60代の女性ら3人が登壇し、国定忠治の名セリフ「赤城の山も今宵を限り……俺にゃあ、生涯、てめぇ〜という強い味方があったのだぁ〜」を口にした。場内は一体感に包まれ、観客からは「子どもの頃の記憶がよみがえった」「はつらつと楽しく生きていけそう」といった感想が寄せられた。

 モノクロ無声映画に命を吹き込むカツベンの全盛期は大正から昭和初期。令和の今や、芸を継承するプロの活弁士は10人前後に過ぎない。丸山さんとて10代の頃にテレビで見たことはあったものの、もちろん「世代」ではない。

 出版社を経て印刷会社に勤務していた丸山さんは、50代半ばになって出版社時代に手がけていた本づくりや映像製作に関わりたくなった。手がかりを調べるうちに八咫さんの本と出合って関心を抱き、17年に東京・浅草で開かれている八咫さんの定期公演に足を運んだ。客層に自在に合わせる語りと動き、エネルギーあふれるライブ感に強く引かれ、広く知ってもらいたいと思った。早速、八咫さんに手紙を書いて熱い思いを伝えたところ、八咫さんも意気に感じ、18年の初ライブに結びついた。

 4月20日のライブはコロナ禍の中断を挟んで19年以来、5年ぶりだった。日本固有の文化を大切にしたいという丸山さんは、カツベンの魅力について「高齢者だけでなく世代を超えて楽しめる」と言う。ライブに地元の盲学校の生徒を招待するなどしており、「社会貢献もできる」と考えている。

 今夏には第6弾のライブを予定している。さらに丸山さんにはもう一つ進めている構想がある。千葉の歴史にまつわる物語や出来事をモチーフにした新作活弁映画の企画・製作だ。「カツベンを継続的に広め、新たなファンを獲得するには新作も必要になる」と考えた。監督を紹介してくれた八咫さん、脚本、演出を担当する人ら周囲に支えられ実現に向かっている。

2024年6月