南米・チリの著名なジャーナリストでアルツハイマー病になった夫、アウグスト・ゴンゴラ氏(2023年5月死去)と国民的女優の妻、パウリナ・ウルティア氏の愛情深い日々の暮らしを記録したドキュメンタリー映画「エターナルメモリー」が8月23日より全国公開される。
アウグスト氏はピノチェト軍事独裁政権時代、独立系メディアでディレクターなどとして働き、その後国営テレビの取締役を務めた。パウリナ氏は女優として活躍するとともに、06年にはチリ初の文化大臣に就任している。
少しずつ記憶をなくし自分が分からなくなっていく夫。その夫に困惑しながらも寄り添い、慈しみながら支える妻。2人の優しさ、ともに困難に立ち向かう力強さをマイテ・アルベルディ監督が丹念に追った。
実生活で、パウリナ氏は仕事場にアウグスト氏を同行させていた。彼女が夫の介護を仕事や生活の一部としていることを知り、「アルツハイマーの患者が介護する人の生活にこれほど溶け込んでいるのを見たことがない」と感銘を受けて映画化を思い立ったという。アルツハイマー病になっても、苦痛に満ちた独裁政権時代の暗黒史、また妻への深い愛情については身体が記憶を保持している。監督は「残されたものを題材にした映画だ」と語っている。
映画化については、アウグスト氏が渋るパウリナ氏を説得したという。アウグスト氏は自身が多くのドキュメンタリーを撮ってきたことを振り返り、「自分が弱っている姿を見せることに何の問題もない」と伝えたそうだ。
本年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。
2024年6月