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「14のリスク排除で認知症45%予防可能」 ランセット専門委報告書

「ランセット」の専門家委員会がまとめたライフステージごとの認知症リスク要因(全体で計45%)

18歳まで ①教育機会の不足(5%)
18~65歳 ②難聴(7%)
③高LDLコレステロール(7%)※新規
④うつ病(3%)
⑤頭部外傷(3%)
⑥運動不足(2%)
⑦糖尿病(2%)
⑧喫煙(2%)
⑨高血圧(2%)
⑩肥満(1%)
⑪過度の飲酒(1%)
65歳以上 ⑫社会的孤立(5%)
⑬大気汚染(3%)
⑭視力障害(2%)※新規

 英医学誌「ランセット」の専門家委員会による、難聴、喫煙など科学的根拠に基づく14項目の認知症リスク要因を紹介した2024年版の報告書が話題だ。24年版は新たな要因として「高コレステロール」と「視力障害」を加え、14項目のリスクを全て取り除けば、認知症を最大で45%予防できる可能性があるとしている。

 委員会は各国の精神・老年医学界などの専門家27人で構成されている。報告書は人の一生を①18歳まで②18〜65歳③65歳以降−−の三つの年代に分け、ライフステージに応じた認知症リスク要因とそのリスクがどの程度のものかを示している。

 「18歳まで」のリスクとしては「教育機会の不足」(対策をすれば認知症を5%予防可能)を挙げている。学ぶことで脳の神経ネットワークは強化されるといい、子どもたちが学べる環境を整備することが対策になるとしている。日本の場合、学校教育でカバーできるレベルという。

 「18〜65歳」に最も気をつけたいのは、難聴と高LDLコレステロール(共に同7%)だとしている。委員会は20年にも同様の報告書を出しているが、高LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールは今回初めてリスク要因に加えられた。

 20年時点では、認知症リスクとするには科学的根拠が不足していたという。しかし今回は悪玉コレステロールが動脈硬化を起こして脳血流の低下を招き、脳にダメージを与えることがデータから裏付けられたという。また、悪玉コレステロールがアルツハイマー病の原因物質とされる異常たんぱく、アミロイドβの脳内への蓄積を促すとの報告もある。

 難聴は人とのコミュニケーションを難しくし、社会からの孤立を招く可能性がある。難聴の人12万人以上を対象とした研究の結果、補聴器を使用している人は、使用していない人と比べて認知症リスクが17%低かったという。

 難聴、悪玉コレステロールとも対策をとることでそれぞれ7%認知症を予防できるという。食生活に注意するほか、ヘッドホンで音声を聞く際に大音量にしないようにしたり、中耳炎などの病気を治療したり、補聴器をつけたりすることが重要だ。

 この他のリスク要因として、うつ病と頭部外傷(各同3%)、運動不足、糖尿病、喫煙、高血圧(各同2%)、肥満と過度の飲酒(各同1%)を列挙している。糖尿病は「発症年齢」が重要といい、65歳より若い時期で発症することがより認知症リスクを高めると報告されている。また過度の飲酒は脳の萎縮を引き起こすという。

 「65歳以降」のリスクとしては、社会的孤立(同5%)、大気汚染(同3%)、視力障害(同2%)を挙げている。退職して社会や人との接点が少なくなったり、家族に先立たれたりして孤立すると、人との会話が減って脳への刺激が少なくなる。また大気汚染に関しては、二酸化窒素などの汚染物質がアミロイドβの蓄積を促進させるとの報告がある。

 視力障害は悪玉コレステロールと並んで今回初めて認知症のリスク要因とされた。外出が困難になり、人と接する機会が減ることにつながるためだ。白内障や緑内障、糖尿病の合併症による視力障害に注意し、なった場合はきちんと治療をすることが重要になる。

2024年12月