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「ライトハイク」シニアの講師養成へ

お題に対する下の句を掲げる参加者たち

 自由詩「ライトハイク」の普及を目指す一般社団法人ライトハイク協会は、子どもたちに詩を教える先生「ポエトリーティーチャー(PT)」の養成に向け、シニア世代を対象とした講座を昨年秋に試行した。来年度からは本格的に始める予定だ。詩の世界への入り口としてライトハイクを広めたいという会社員で同協会の代表理事、八塚慎一郎さん(49)の願いが形となって動き始めた。

 ライトハイクは高校時代から明るい詩にひかれていた八塚さんが考案した、最短2行の自由詩。1行目の上の句がお題として出され、大喜利の要領で2行目となる下の句をひねり出して結ぶ。季語や定型などの決まりはなく、唯一のルールが上の句と下の句の文字数をそろえることだ。

 同協会は趣旨に賛同した落語家の林家たい平さんらを理事に迎え、2023年9月に発足した。X(旧Twitter)のアカウント(@lighthaiku)を通じて毎月作品を募っており、初年度は「軽く押さえてくださいね」というお題に対する投句で下の句を結んだ次の作品が年間大賞句に選定された。

 軽く押さえてくださいね
 恋という字の終わりの点

 24年7月からは東京都港区の小中高生を対象に八塚さんや落語家の入船亭遊京さん、芸人のみやぞんさんらが指導役となって講座を開いた。ただ、世代を超えた広がりを持たせるにはシニアへの展開が不可欠で、定年退職者らを対象とした講座が必要と考えた。更にセンスのある受講者は同協会がPTとして認定し、地元の小中高校への出張授業を受け持ってもらう構想を掲げた。

 シニア向けの初回のお試し講座を24年10月に港区で開き、男性3人、女性10人が参加した。まずは八塚さんがたい平さんと同じ「笑点」メンバー、春風亭一之輔さんからの10字のお題「布団からはみ出した足」を上の句として示し、結びの句を募った。それぞれが案を掲げ、八塚さんらが選んだ2句から参加者による多数決で

 布団からはみ出した足
 冬まだ遠からじ月の夜

が優れた詩に選ばれた。

 続いて、上の句から下の句を考え、次はその下の句をお題とするのを3回繰り返して4行詩を編む「三つ編み」に取り組んだ。最初のお題は8文字の「月がきれいですね」。結果、生まれたのが

 月がきれいですね
 月についたか母よ
 涙のしずく雲滲(にじ)む
 あの時はごめんね

との一編だった。八塚さんは「(意図せず結果として)起承転結になっている」と評した。

 PTとして認定を受けるには、全10回の講座を経て作品の獲得ポイントが上位であることに加え、語彙(ごい)力テストや面接試験をクリアする必要がある。八塚さんは25年度からスタートさせるシニア向けの連続講座を通じ、地域の子どもと高齢者を「詩」で結ぶプロジェクトとして育てていく考えだ。

 昨秋のお試し講座に参加した、港区で不動産業を営む定方義和さん(64)は「4年前に定年退職したが、人との交流が少ない事務の仕事だったので知り合いを増やしたかった。脳トレ効果もあり認知症予防になると考えた。想像力を働かせられる点がよく、ぜひ続けて地域の役に立ちたい」と話していた。

2024年12月