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2024年 介護事業者倒産172件で過去最多

 東京商工リサーチによると、2024年の介護事業者の倒産は全国で前年比4割(50件)増の172件に達し、介護保険制度が始まった00年以降、最多となった。また休廃業・解散件数は612件で、倒産件数と合わせると784の事業者が介護サービスの提供をやめたことになる。倒産事業者の5割弱、休廃業・解散事業所の7割を訪問介護の事業者が占めており、24年度の介護報酬改定で厚生労働省が訪問介護の基本報酬引き下げに踏み切ったことが大きく影響したと見られる。

 業種別に見ると、訪問介護の倒産件数は172件中81件と過去最多だった。次いでデイサービスなど通所・短期入所介護事業が56件、有料老人ホーム18件など。規模別では従業員数5人未満が6割近い103件、5人以上10人未満が2割強の40件と、小規模・零細事業者の苦境が目立つ。

 介護報酬の改定は3年に1度。24年度は、報酬全体では21〜23年度の価格から1・59%引き上げた一方で、訪問介護は基本報酬を2〜3%引き下げた。身体介護の場合、例えば20分以上30分未満の単価は60円減の2500円。また、掃除や洗濯などの生活援助サービスの場合、20分以上45分未満の単価を40円減の1830円とした。休廃業・解散件数で見ても訪問介護は612件中448件に達し、他業種と比べて群を抜く。

 厚労省は「訪問介護業者は黒字幅が大きかった」と説明しているものの、多くの入居者がいる高齢者施設などに併設され、効率よく居住者を訪れることができる事業者の収益が全体を押し上げた結果と見られている。散在する居宅を一軒ずつ訪ねる小規模事業者にとっては報酬減が響き、ヘルパーら介護職員の人手不足にも見舞われてダブルパンチとなっている。

 同省はヘルパーらの給与引き上げに充てる「処遇改善加算」を改新したことで、基本報酬の減額をカバーできるとしていた。それでも、昨年9月に厚労省が示した試算によると、旧加算から新加算に移行した事業所のうち増収を見込めるのは3%だけ。初めて新加算を取得した事業所でも増収を見込めるのは17%止まりだ。

 東京都内のある訪問介護事業所の場合、基本報酬が数千万円単位で下がり、経営を圧迫しているという。経営者は「ヘルパーも雇えず、周辺でも閉じる事業所が次々出ている。うちも苦しい」と言い、「何より報酬減を突きつけられ、ギリギリ頑張っていた現場がモチベーションを落としたことが大きい」と肩を落とす。

 介護事業者の経営悪化に結びつく介護職員の不足にも拍車がかかっている。厚労省は高齢者数がほぼピークを迎える40年度に必要な介護職員数を約272万人と推計している。しかし、23年度の職員数は前年度比で2万9000人減の約212万6000人にとどまり、初めて前年度を下回った。

2025年3月