トピックス

都長寿医療センターガイド発/独居高齢者支える訪問看護

 東京都健康長寿医療センターは「独居認知症高齢者の自立生活を支える訪問看護の実践ガイド」を発行した。独り暮らしの認知症の人への接し方に関して「本人中心のケア(パーソン・センタード・ケア)」「多職種協働」が重要と指摘し、この二つを実践するためのヒントと、計18項目のチェックリストを掲載している。専門職の間で「訪問看護師に限らず、認知症の人と関わる者全員に役立つ」と高い評価を得ている。

 「本人中心のケア」は、認知症の人の尊厳を守り、当事者の人生や価値観、思い出などを踏まえて「その人らしさ」を大切にするものだ。そうした本人の多岐にわたる希望に寄り添ったケアには異なる専門性を持った職種の人が連携して支援する必要があるという。そして①信頼関係の構築②本人を理解し、ニーズやリスク、心身状態を把握③多職種による個別的支援④予測的な判断と利用者、家族への意思決定支援——の四つの支援ステップを踏むことが利用者の自立生活を支えるとしている。

 ①〜④のステップを実践するためのチェックリストとして、「本人の思いの表出を受け止め、互いを信頼して話し合うことのできる関係を築く」(ステップ①)、「生活歴を聞き、本人の価値観や好み、考え方を理解する」「表情や行動の変化から、本人の心身の変化に気づく」(ステップ②)、「医療、介護、福祉職間で情報共有し、支援方針の合意形成をする」(ステップ③)、「今の暮らしの継続や暮らしの場の移行について、本人・家族の意向を聞き、今後の見通しを伝えて継続的に話し合う」(ステップ④)など18項目を挙げている。

 解説編では18項目それぞれに大切な理由や期待される効果、課題、実践のためのヒントが記されている。例えばステップ②の「本人の価値観や好み、考え方を理解する」大切さについては、その人なりの行動の意味は生活歴や価値観を知ることで腑(ふ)に落ちることがあり、信頼関係の構築につながると説明している。

 また、これを実践するには時間を取って利用者の話に耳を傾ける他、「生活歴シート」を利用することや他の支援者からの情報収集が役立つといい、効果としてはケアを個別化・最適化できるといったことが見込めるとしている。プライバシーに関する情報は収集目的を説明して同意を得、守秘義務を守る約束をすることなどを注意事項に挙げている。

 製本には全国訪問看護事業協会の協力を得た。チェックリストは訪問看護師へのインタビューを重ねて原案を作成し、独り暮らしの認知症高齢者の支援に精通した訪問看護師の意見を集約して作成した。非売品だが、インターネット上で書名を検索すれば、同センターのホームページなどから無料でダウンロードできる。

2025年6月