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デイケアにライトハイク導入/メモリークリニックお茶の水・取手

 認知症の進行予防に実績がある医療法人社団創知会(朝田隆理事長)のメモリークリニックお茶の水(東京都文京区)と同取手(茨城県取手市)の両医院は7月から月に1回、患者向けのデイケアプログラムに自由詩「ライトハイク」の創作を取り入れた。ライトハイクはお題の上の句と同じ文字数の言葉を考えて下の句を結ぶのが唯一のルール。普段使わない脳の部位を刺激し、治療の視点からも有効だと判断したという。

 7月29日、初の講座がメモリークリニックお茶の水で開かれた。参加したのは軽度認知障害(MCI)の人ら27人(男性7人、女性20人)。司会役の一般社団法人「ライトハイク協会」の八塚(やつづか)慎一郎代表理事が「5分で下の句を考えてください」と伝え、まずは「三年経ったら」という6文字のお題を示した。

 参加者たちは「う〜ん、難しい」と頭をひねりつつ、マス目入りの用紙に下の句を書き込み、次々と両手で掲げた。「いきてない?」「あとがない。」といった返句に笑いが起き、「宇宙人と友達」という回答には「夢があっていいね!」とのかけ声が飛んだ。

 2時間のプログラムの中で八塚さんは矢継ぎ早にお題を出した。「雨の遊園地は」には、「雨粒の運動会」「傘のパレード」といった情景の浮かぶ言葉が返ってきた。また、「今夜は花火大会」という7文字の上の句には、「千客万来高層階」「孫楽し線香花火」などの下の句が寄せられ、参加者たちは「なるほど」「上手だねえ」などと感想を口にしていた。

 最後は起句となるお題から連続して結んでいく「三つ編み」に挑戦した。そして、

  さよならのかわりに
  おもい出の道を歩く
  君の姿を肌身に感じ

 などの作品が生まれた。

 参加した女性(80)は「最初は戸惑いましたが、自分の発想にない他の人の回答に触れて刺激を受け、自分の殻を破ることができるような気がした」と言い、80代の別の女性も「楽しかったのでまた参加する」と笑顔を見せた。

 同医院では、通常の治療に加え、音楽、絵画療法や筋トレなどさまざまなプログラムを実施している。朝田理事長が患者の関心を引くメニューを検討している中でライトハイクの存在を知り、プログラムへの採用に踏み切った。

 プログラムの中には参加者があまり関心を示さないものもあるという。お茶の水院の看護師で企画経営担当の責任者、坂井輝男さんは「今回は笑いが起き、居眠りする人もおらず、ついていけない人がほぼいなかったのもよかった。脳は楽を覚えるので、違う部位を使って脳に楽をさせないライトハイクは有意だと思う」と話す。

 八塚さんは「全ての作品をさまざまな観点から取り上げて皆さんの自己肯定感を高められるようにしたい。今後は下の句を結べない人からも言葉を引き出す工夫をしていきたい」と意気込んでいる。

2025年8月