認知症と診断された後、介護保険のサービスを受け始めるまでに平均で1年3カ月かかっていた——。厚生労働省の研究班が調査の速報値をまとめたところ、こうした結果が出た。サービスに関する情報不足が要因と見られ、この「空白の期間」が長びくと認知症の症状が進行するとされている。同省は情報提供を含め、早期支援に向けた体制づくりの重要性を指摘している。
研究班は1月から認知症と診断された人の家族約130人から診断前と診断後の状況を聞き取った。認知症と診断されてから、デイサービスなどの介護保険サービスにつながるまでの期間は平均で1年3カ月余。8年前の調査よりは約2カ月短縮されたものの、依然長期にわたる時間を要している。また、認知機能に異変を感じてから実際に認知症と診断されるまでの期間は1年余だった。
診断からサービスを受けるまでに空白期間が生じる理由としては、医療機関が介護保険などのサービスについてきちんと伝えていないこと、その他各種サービスの情報も含め十分に提供されておらず、どんな支援を受けられるのかを知らない人も少なくないことなどが指摘されている。診断直後は不安や混乱を抱える本人や家族にとって精神的負担が大きく、早期に適切な支援につなげることが必要という。
また、本人や周囲が異変に気づいてから診断を受けるまでの空白期間については、自らの健康への過信などに加え、「認知症になったら終わり」といった誤解や偏見に基づく恐怖心によって生じていると見られている。認知症に対する正しい認識、早期の対応の重要性を周知することが求められている。
2025年8月