第54回毎日社会福祉顕彰
福祉の向上に尽くした個人、団体を顕彰する第54回毎日社会福祉顕彰(毎日新聞東京・大阪・西部社会事業団主催、厚生労働省、全国社会福祉協議会後援)に、全国から推薦された19件のうち次の3件(個人1、団体2)が選ばれました。10月31日に東京都内であった贈呈式で、受賞者に賞牌(しょうはい)と賞金(各100万円)が贈られました。(2024年11月5日)
◇特定非営利活動法人JFCネットワーク(鈴木雅子理事長=東京都新宿区)
日本人の男性とフィリピン人の女性の間に生まれた子どもたちの支援に取り組む市民団体が発祥で、1994年に設立されました。JFCとはJapanese-Filipino children(ジャパニーズ-フィリピーノ チルドレン)の略称です。日本で接客業として働いたフィリピン女性と、客の日本人男性を両親に産まれた子どもの問題は、1980年ごろから目立ち始めました。フィリピンや日本で母親と暮らしながら、父親から養育を放棄されたり、認知されないケースが明らかになり、経済的、精神的な支援が必要な子どもたちが取り残されました。国内で専門的に支援に乗り出した先駆けが、JFCネットワークです。弁護士などと連携し、認知や養育費を請求したり、子どもの国籍を取得する活動など、子どもの人権を守る活動を続けています。
◇酒井勇幸氏(社会福祉法人いなりやま福祉会 常務理事=長野県千曲市)
80歳になる酒井さんは視力に先天的な障害を抱え、盲学校卒業後、地元の福祉施設に勤務しながら、仲間を集めて「いなりやま福祉会」を立ち上げました。当時は障がい者の働く場がほとんどないような状況で、1981年、長野県では初めての障がい者共同作業所となる「いなりやま共同作業所」を開設しました。
2003年には「いなりやま福祉会」の社会福祉法人の認可を取得しました。障がい者が遠方の施設に行かなくてもよいように、知的障がい者の通所授産施設をはじめ、さまざまな施設や事業の整備に取り組みました。現在では、就労支援事業所2カ所、生活介護事業所1カ所、グループホーム4カ所などを運営し、地方福祉のモデルケースとして知られるようになりました。
◇社会福祉法人やまなみ会 やまなみ工房(山下完和(まさと)施設長=滋賀県甲賀市)
やまなみ工房は社会福祉法人やまなみ会が運営するアート工房です。1986年、甲賀市に共同作業所として開設され、知的障がいや精神疾患を抱える人々の自由な発想による独創的な芸術作品が、国内外で高い評価を得ています。
当初は陶芸、手工芸の2部門で作品づくりが始まり、1997年に工房が完成しました。やまなみ工房には美術を専門的に学んだ人はいません。1989年にやまなみ会の共同作業所に支援員として入った山下さんは、「作品作りで彼らがしたいことを楽しくしてもらう」ことを大切したと言います。そうした自由な雰囲気が「自分のやりたいように」「納得するまで時間をかけて描く」という作者の姿勢を引き出し、完成した作品は豊かな発想や個性的な色使いなどで注目を集めるようになりました。
3人しかいなかった通所者は、現在90人ほどになりました。なかには米国ニューヨークのギャラリーで初の個展を開くような「アーティスト」も誕生しています。また、多くの人が描いたデザインがファッションや和菓子の包装紙などで採用されています。作品を通じてやまなみ工房の障がい者は国内外でその存在を知られ、社会との関わりや人生の喜びを持てるようになっています。
<主催> 毎日新聞東京・大阪・西部社会事業団
<後援> 厚生労働省、全国社会福祉協議会