2022年ウクライナ侵攻 難民救援キャンペーン【写真特集】
ウクライナのへルソンから避難し、ポーランドで働く夫と再会を果たして
涙する妻と子。ポーランド南東部の国境の町メディカには今もウクライナ難民が
次々と入国している=2022年3月23日
ウクライナから周辺国に逃れてきた難民は400万人を超えた。戦火を避けて国境にたどり着くまでには、ロシア軍の包囲網を命がけで突破したり、満員の列車やバスで十数時間移動したりしてきた人も少なくない。
ただ国境を越えた後の道のりも厳しい。ポーランドをはじめとする受け入れ国では、難民の増加に伴って住宅事情が悪化している。利便性が高い大都市部では賃料が上がり、希望通りの家を見つけるのが難しい。一部の難民はテレワークで元の仕事を続けるが、多くの人は避難と同時に失業し、収入を失った。言語が違う国で子供の教育の機会をどう確保するのかも課題だ。
約230万人が避難するポーランドでは、政府が難民に住民サービスを提供するためのID番号発行が始まった。教育や医療、福祉などで地元住民並みの支援が受けられるようになるため、登録会場には多くの難民が殺到。政府側の作業が追いつかずに混乱する場面も見られた。
精神的な苦痛に悩まされる人々も多い。親族や友人を母国に残し、「自分だけ安全な場所に避難してしまった」と罪の意識を抱く難民もいる。避難前に自宅で聞いた爆音が心の傷となり、避難所でささいな物音におびえる人がいた。スマートフォンで侵攻関連の速報がすぐに入手できる半面、「心が痛んで他のことができなくなるから」と、ニュースをチェックする時間や回数を自分で制限する人もいた。
住む場所、収入、仕事、教育、家族との暮らし、心の平穏……。市民からそれを根こそぎ奪うのが、戦争の一面だ。 「早く元の暮らしに戻りたい」。難民たちの思いがかなうのは、一体いつになるのだろうか。【メディカ(ポーランド南東部)で平野光芳、写真・小出洋平】