2022年モルドバ報告 【写真特集】
私のウクライナ
通っていた学校、友達と笑い合った公園、自宅に残したままのペット、兄弟たちと眠りについていた自宅などが、白紙のスケッチブックに鮮やかによみがえった。
ロシア軍による侵攻で、7月下旬までに約54万人が避難し、今も約8万人が残るウクライナの隣国モルドバ。複数の避難民滞在施設を訪ねると、多くの子どもたちの姿が目についた。
「ウクライナでの思い出を絵に描いてください」。記者の問いかけに応じて、子どもたちがクレヨンを手に取った。就学前の子どもたちは、国旗や花、太陽を描く子が多かった。しかし、年齢が上がるにつれて具体的な物を描くようになり、その思い出を語ってくれた。
9月には新学期が始まるため、多くの親は帰国するかどうか、頭を悩ませている。オンライン授業では限界があり、モルドバでは言語面の問題から勉学に遅れが出るとの懸念だ。だが、ウクライナに残る父親が危険にさらされていたり、学校や自宅が破壊されたりした子どももいた。
明るいトーンの絵には、破壊された街は描かれておらず、侵攻前の穏やかに過ごしてきた日常がうかがえる。「友達や家族と笑いあえる日が、一日も早く戻りますように」。絵を手にし、カメラを見つめる小さな瞳からは、そんな切なる思いが感じられた。
写真・文山田尚弘 (すべてモルドバ国内で2022年5〜7月に撮影、年齢は取材時)