2019.2.15
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五味謙二さん(第25回日本陶芸展大賞)

五味謙二さん

 日本陶芸展大賞に輝いた「shi-tou『シサ』」には、完成までおよそ半年をかけた。粘土を細長く伸ばしたものを重ねていく「ひも作り」の手法で、2体の陶器を組み合わせた。人体を想起させる優美な曲線が絡み合う造形が印象的だ。「良い形で40代のスタートが切れた」とほほえむ。

 長野県茅野市の出身。縄文遺物として最初に国宝に指定された土偶「縄文のビーナス」が出土し、縄文遺跡が点在する。幼少期、祖父が収集した土器の破片を目にしたが、当時はさほど関心を持たなかった。「今振り返ると、そうした場所に自分のルーツがあることは陶芸家としての大きな後ろ盾になっている」

 中高時代はバスケットボールに明け暮れ、実業団入りも目指したが、けがで断念。早稲田大に進学し、新たな道を探そうと書店巡りをしていて陶芸の本に出合った。「バスケも陶芸も、自身の思考過程に沿って形が変化していく」と共通点を見いだし、学内の陶芸サークルで創作に没頭した。

 卒業後は那覇市にある壺屋焼(つぼややき)の窯元で修業。「沖縄では釉薬(ゆうやく)にサンゴを使うこともある。模様や粘土も本土とは違って独特だった」と新たな発見に胸を躍らせた。その後、美濃焼の貸し工房でも作陶に励んだ。2016年からは茨城県立笠間陶芸大学校の特任教授として後進を指導する。「学生は頭が固い。その固さを壊し、もっと想像させたい」。小手先の技術だけを教えるつもりはない。<文と写真・太田圭介>

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