主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2009年コンゴ民主共和国 闇に差す光 略奪の大地で (2)

武装勢力のレイプ横行
子どもと女性にとって最悪の場所

托鉢のため街に出るブバ・ディコ君(前列右から2人目)ら「マラブ-」と暮らす子どもたち=コンゴ民主共和国・ワガドゥグで

木の柱にもたれかかりうつむくムケシマナ・カロンバさん(手前)と
ザワディ・イシャラさん=コンゴ民主共和国東部ゴマの
ケシェロ医療センターで2009年6月12日、森田剛史撮影

 わずかに陽(ひ)が差し込む薄暗い病棟のベッドに、うつろな瞳の少女と女性がもたれ合うように腰掛けていた。1カ月前、武装勢力の兵士に強姦(ごうかん)され、治療で入院しているザワディ・イシャラさん(10)と、母のムケシマナ・カロンバさん(28)だ。

 コンゴ民主共和国の東部は、恐怖心を植え付ける目的などから武装勢力によるレイプが横行。「子どもと女性にとって世界で最悪の場所」とも言われる。国連人口基金(UNFPA)は昨年、毎月平均1300件の性的暴力を確認、65%以上は子どもだった。この親子が入院する北キブ州ゴマのケシェロ医療センター(101床)でも昨年、3~80歳の469人が受診した。

 イシャラさんとカロンバさんの家がある同州カシェベレが襲われたのは今年5月。銃声とともに軍服姿の男4人がなだれ込み、2人を乱暴した。「大丈夫か」。父ハビ・マナさん(30)が牧場から戻り、震えて動けずにいる2人に声をかけた。道端には、血まみれの隣人たち。イシャラさんが生まれた時に贈り物をくれた女性も息絶えていた。

コンゴ民主共和国地図 

コンゴ民主共和国地図 

 ギレイン・ンバマ院長(34)は「子宮を取ったり、命を落とす患者も多い。この親子は軽傷だが、精神的ダメージは深刻だ」と話した。カロンバさんは、人なつっこいイシャラさんが「イライラしやすく、口数が減った。幸せだった生活を……」と声を震わせた。取材のため、医師に2人を病室から呼び出してもらう時、イシャラさんが突然泣きだした。兵士に連行されると思い込んだという。 

 被害者が家族から拒絶されるケースも珍しくない。この病院でも何人もの女性が離婚された。それだけに、2人の退院を避難民キャンプで待つマナさんの存在は大きい。カロンバさんは「彼が支え」、イシャラさんは「将来はお父さんみたいに牧場を経営したい」と初めて笑顔を見せた。

 しかし、イシャラさんのまぶたは半分閉じたまま。そして、ふと、つぶやいた。「この国にいる限り、幸せはない。どこか遠くの国に行きたい」【田中龍士】

Back

Next