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2016年ヨルダンのシリア難民報告【写真特集】

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アズラック難民キャンプで暮らす男の子=ヨルダン・ザルカ県で2016年9月29日、久保玲撮影

アズラック難民キャンプで暮らす男の子
=ヨルダン・ザルカ県で2016年9月29日、久保玲撮影

 2011年春から5年以上続くシリアの内戦で、空爆や迫害から逃れるため500万人近くが国外に逃れた。国境を越え、隣国ヨルダンにたどり着いた65万人のうち12万人ほどが「ザータリ」「アズラック」の二つの巨大な難民キャンプで暮らす。いずれも首都アンマンから車で1時間ほど。砂漠の真ん中に設営されたキャンプを歩くと、古里を追われた人たちの帰郷への強い願いを感じた。

 「この子には将来シリアに戻ってほしい。でも、何より大切なのは安全に暮らせること」。10月初旬、アズラックキャンプ内の病院。30分前に第4子となる3600グラムの女児を産んだばかりのゼイナ・サイードさん(35)は、まだ目の開かぬ我が子をいとおしげに見つめながらつぶやいた。

 シリアでは子だくさんの家庭が多い。約3万6000人が暮らすアズラックでは58%が18歳未満の子どもだ。2014年4月の設置以降、これまでに1400人の新たな命が誕生した。一方、帰郷の夢がかなわぬまま亡くなった難民もおり、キャンプ近くの墓地に埋葬される。

 キャンプでは毎日、朝6時から焼きたてのパンが1人4枚ずつ配られる。配給の列に並ぶのは主に子どもたち。ほんのり温かさの残るパンを大事そうに抱えて自宅に戻る。

 スーパーマーケットには肉、野菜、オリーブオイルなど、キャンプの外と変わらぬ食材が並ぶ。キャンプ運営を支援する国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は虹彩認識の仕組みを使って代金の支払いを管轄する最先端のシステムを導入している。

 スーパーを出ると、買い物客の荷物を運ぶ小遣い稼ぎのために一輪車を手にした少年たちが集まっていた。重たい荷物を数キロ運んで0・5ヨルダン・ディナール(約75円)を得る。

 「私たちはキャンプで一生を終えるのですか? 戦争はいつ終わりますか」。褐色のやせた腕をした16歳の少年が声を掛けてきた。「神が許せばシリアに帰りたいです」<写真・久保玲/文・津久井達>

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