住みなれたまちで私らしく〜心地よい暮らしのヒント

退院後 生活の質維持したい 訪問介護で専門的援助を

退院後の在宅生活再開に訪問介護サービスを利用する。
生活援助を受け、今までの生活の質を維持したい。

中村孝幸さん(社会福祉士、「認知症110番」電話相談員)
中村孝幸さん(社会福祉士、「認知症110番」電話相談員)

●事例の概要

 Fさん(82歳・女性)は、独り暮らし。他県に長男夫婦がいます。3カ月前、めまいを感じて受診したところ、軽度の脳梗塞と診断され入院しました。入院直後は一時的に物忘れのような症状も見られましたが、在宅復帰を目指して治療とリハビリに取り組んできました。

 数カ月後、リハビリの成果もあり、大きな後遺症もなく退院しました。ただ、自分の足で歩くことはできますが、「物を持って移動するとバランスを崩して転んでしまうのでは」という不安が残っています。また、日付や曜日の感覚がやや薄れていることも気になっていました。そこで退院前に、介護保険認定の申請を済ませておきました。

●Fさんの心配事

 数カ月間の入院生活で、掃除・調理など日常の家事から遠ざかってしまっていたFさん。退院後、果たして以前と同じように一人で暮らしていけるのか、不安は尽きません。長男夫婦もときどき顔を見せてはくれますが、定期的ではないため、日々の生活への心配はなかなか消えません。

●Fさんが活用できるサービス

 65歳以上で介護が必要になった方には、公的介護保険制度が利用できます(40〜64歳でも、医療保険に加入し特定疾病がある人は対象)。入院した場合は特に、退院後の生活に備えて早めに要介護認定の申請をしておくことをお勧めします。

 申請は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターで、本人または家族が行います。調査員による訪問調査を経て、申請後原則30日以内に判定結果が通知されます。

●Fさんが「自分らしく」暮らすためのヒント

 退院直後は心身の状態が変わりやすい時期。状態が落ち着くまでは、専門的なサポートを上手に取り入れながら、日常生活を少しずつ立て直していくことが大切です。

 Fさんは介護保険の申請の結果、要支援1の認定を受けました。地域包括支援センターに相談し、訪問型サービス(ホームヘルパーによる生活援助)を利用することにしました。重い荷物を持っての移動や、腰をかがめる必要がある浴槽・トイレの掃除をヘルパーに手伝ってもらうことで、安心して生活できる環境が整いました。

 週に数回のヘルパー訪問は、家事の助けになるだけでなく、会話の機会にもなりました。訪問の曜日や時間を意識するようになったことで生活リズムが戻り、自分で体を動かす機会も増え、少しずつ自信を取り戻したFさん。数カ月後には、訪問型サービスを卒業するまでに回復しました。

 Fさんのように、退院後の不安を解消し、自分の望む暮らしを取り戻すことは、認知症予防にもつながる大切な一歩です。

執筆者プロフィール

中村孝幸(なかむら・たかゆき)
社会福祉士、「認知症110番」電話相談員