ひとりで抱えない 専門職が答える認知症相談

第2回 自分や家族は認知症? 周囲が異変に気付くことが大切

認知症や物忘れに関する悩みや不安について、専門職が具体的にアドバイスする隔月連載の相談コーナーです。 家族の対応、生活支援など、日々の暮らしに役立つヒントをお届けします。

初期症状と家族の気づきが、早期発見につながる

中田京子さん(臨床心理士・公認心理師)
中田京子さん
臨床心理士・公認心理師

 数多く寄せられる相談の一つに、「自分(家族)は認知症ではないか?」との不安があります。「最近物忘れが気になる」「(相手の名前などが)思い出せない」「前にできていた事ができなくなった」などです。

 早期に認知症に気づけば、日常生活を改善(運動や食事などの工夫、認知症予防10か条参照)することで進行を緩やかにできる可能性があります。疾患の種類によっては、投薬も有効となります。実際に友人のお父様は、認知症の初期に服薬と軽い運動習慣を持つようにしたことで、亡くなるまで現状を維持できました。早い段階でお父様の変化に気づいたのは、ご夫人と娘さんでした。

 私の母は認知症(今は有料老人ホーム入居)です。いつから母の認知症が始まっていたのか、振り返ってみました。母方の祖母も認知症で母が介護していました。このため母の認知症に対する意識は高かったと思います。よく「私がボケたらあなたの病院に入れてね」(当時、私は認知症の病院に勤務しており、祖母が入院していました)と言っていました。祖母亡き後、父が在宅で酸素を吸入する療養生活となり、母は父の介護を献身的に行いました。

 父は母が76歳の時に亡くなりました。その少し前のこと、父は私に「お母さんは狂っている、経済面の負担はさせないようにしたけれど、みてやってくれ」と言ったのでした。当時は、母に異変を感じていなかったので、重くはとらえていませんでした。今振り返れば、父は一緒に暮らしていた母の異変に気づいていたのかもしれません。

 母は母性愛に溢(あふ)れ、特に子どもや孫には献身的に寄り添う人でした。それがある日、寄り添う姿勢が消えてしまい、驚いたことがありました。ちょうど父が母の異変を訴えていた頃です。

 認知症になると、意欲が落ちて何事も億劫(おっくう)になることがあります。それで子どもたちにも寄り添えなかったのかもしれません。

 母に認知症の症状が明確に表れたのは、父が亡くなってからです。やがて母の希望で検査を受けて、認知症と診断されました。父の言葉を重く受け止めればよかった、母の喪失感にもっと寄り添えばよかったと後悔は拭えません。

不安感じたら相談

 早期発見には、自覚症状はもとより、周囲が異変に気付くことが大切です。異変の代表例は意欲の喪失や怒りっぽくなることなどです。不安に感じたら相談をしましょう。相談先は地域包括支援センター、かかりつけ医(認知症を検査できる病院を紹介してもらう)、「認知症110番」などです。年相応の老化に伴う物忘れもあります。深刻にならないためにも相談をしましょう。

 さらに、家族や周囲の人に「認知症を疑った時は教えてね」「病院に連れて行ってね」と頼んでおくことが大切です。周囲は気が付いても、指摘していいかどうか迷います。相手に「認知症ではないですか?」と聞くのはためらわれますので、あらかじめお願いしておくことが大事なポイントです。

執筆者プロフィール

中田京子(なかた・きょうこ)
臨床心理士・公認心理師。
現場で認知症に関する数多くの相談に対応し、「認知症110番」相談員として活動。 高齢者や家族の心理支援に長年携わっている。