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男性介護の苦悩支え合い/スペードの会 広がる活動の輪

スペードの会代表・滝澤勉さん

 男性の介護者が集まって支え合う「スペードの会」(東京都調布市)が発足から2年余りを迎え、少しずつ活動の幅を広げている。支援を通じて見えてきた課題を踏まえ、今春には調布市に「男性介護者を孤独・孤立リスク層として明示的に位置づけること」などを柱とする提言書を提出した。会の代表、滝澤勉さん(71)は「男性介護者の大変さを、またそういう人がそばにいることを多くの方に知ってほしい」と話す。

 同会では毎月第4金曜日、応募してきた1人〜数人の男性介護者から話を聞いている。会場は協力を申し出た薬局チェーン店の会議室。耳を傾けるのは介護経験者や専門職も交えた10人前後だ。

 ある日は車椅子の妻を介護する高齢男性が心情を吐露した。妻を連れ出すと、帰りは3階の自宅まで妻を背負って階段を上らねばならない。一生懸命やっても誰も褒めてくれない孤立のつらさをせきを切ったように語り始めた。日によっては介護者が互いの不安や悩みを打ち明ける場面もあり、「気が楽になった」「(参加した父が)吹っ切れて明るくなった」といった声が寄せられている。

 かつて家族介護の担い手は妻や娘だった。ただ厚生労働省の調査では、性別役割分業に関する意識の変化や未婚者の急増に伴って近年は家族介護者の3人に1人が息子や夫など男性となっている。

 それでも男性は介護を仕事のように捉えがち。滝澤さんによると、「弱みは見せられない」「人に支援を頼むべきではない」と限界まで1人で抱え込み、介護離職や虐待に至るリスクも高い傾向があるという。地域とのつながりの薄い都市部の男性は、相談先すら分からない人が少なくない。

 滝澤さんは「自ら声を上げない男性には(支援者から手を差し伸べる)『アウトリーチ』が必要」などと男性介護者を巡る課題を次々挙げる。とはいえ現役時代は金融機関に勤め、介護とは無縁だった。高齢者対策に携わるようになったのは、退職後にたまたまハローワークで市の福祉公社の仕事に出合ったことだった。

 その仕事の一つがシニア層に「地域デビュー」を勧める委員会に加わったことだった。委員として介護者支援団体を取材した際、男性介護者の悩みを直接聞いたのを契機に、その団体から「男性介護者のためのボランティア支援団体を立ち上げて」と要請を受けた。「男性介護者は悩んでいる方が多いのにめったに来ないんです」という訴えに、滝澤さんは「男性介護者の存在を知ってもらう必要がある」と共感し、2024年4月にスペードの会を発足させた。

 介護していることを知られたくない、という男性は多い。だから悩みを聞く場でも参加者に名前や住所は問わず、写真、録音は厳禁。また、「次回もぜひ」との声掛けは避けている。結果的に参加を強い、その人のストレスになる可能性を否定できないからだ。

 傾聴の積み重ねは50〜60人が参加する毎年のフォーラム開催へと広がった。今年3月には調布市に男性介護者支援を「孤独・孤立対策」と「ケアラー支援」の交点に位置づけるよう求めた提言書を出すなど、同会の活動は行政にも影響を与えうるようになっている。滝澤さんたちは今後の課題として、長年介護してきた人を亡くした介護者の心を支える「グリーフケア」の在り方を模索している。

 問い合わせは090・1606・9513(滝澤さんの留守番電話)へ。