2010年ケニア・エチオピア ケニアから 乾きと命 (1)

敗血症でやせ細ったエカイ・フィリップちゃん。大きな瞳が空(くう)を見つめた
=ケニア・トゥルカナ地方で2010年6月29日、小松雄介撮影
生後1カ月の男児エカイ・フィリップちゃんの手足はやせ細り、右手に刺さった点滴の針が痛々しい。体重は出生直後の2・8キロのまま。母親は「生後10日 目ごろから高熱が続き、母乳を飲まない」と表情を曇らせる。病院の医師によると、不衛生な環境での出産による敗血症で、栄養失調の状態だという。
ケニア北西部トゥルカナ地方。中心都市ロドワーの公立病院では重い栄養失調の子どもたちが治療を受けている。病院を支援している国連児童基金(ユニセフ) は近郊のナダパル村などで、栄養失調の子どもたちに袋に入ったペースト状の栄養補助食品を配るプログラムも実施している。
ロドワー
6月末の配給日、母に抱かれてナダパル村の健康センターに来た女児、ナンシー・アジコンちゃん(2)の顔は、栄養失調で口の周辺の皮膚が黒ずみ、右ほおに は白い斑点ができていた。体重を測定すると、6・4キロ。同年齢の平均体重の半分しかない。母ナウコット・エカルさん(25)は「干ばつで家畜のヤギが約 20頭飢え死にし、数頭しか生き残らなかった。木の枝でかごを作って売り、生活費を稼ごうとしたが、高く売れず、食事を十分に与えることができなかった」 と話す。
ユニセフによると、昨年この地方の5歳未満の栄養失調の割合は23%で、世界保健機関の定める「非常事態レベル」(15%以上)に入った。最大の要因は度重なる干ばつだ。乾燥地帯にあるこの地方では、家畜のヤギや牛からミルクや肉などの食糧や現金収入を得る。干ばつで家畜を失ったことで、深刻な栄養失調に陥る子どもが増えている。
以前から干ばつ被害は何度も経験してきた。しかしユニセフの担当者によると、かつて6~7年に1度だった干ばつが最近は2~3年ごとに起きている。07年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出した報告書は「(地球温暖化によって)干ばつの影響を受ける地域の範囲は広がる可能性が高い。豪雨も頻度が上がる可能性が高く、洪水の危険が増加する」と警告している。
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気候変動に伴う干ばつと洪水の被害にアフリカ各地の人々が苦しんでいる。厳しい環境に置かれ、病み、助けを求める子どもたちの姿を、ケニア・エチオピアで追った。【遠藤孝康】