主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2010年ケニア・エチオピア ケニアから 乾きと命 (13)

学校行き 人生変える

キベラスラムのごみ捨て場でプラスチックを拾うピーター・ジョン君。「学校に行きたい」とつぶやいた=ケニア・ナイロビで、小松雄介撮影

キベラスラムのごみ捨て場でプラスチックを拾う
ピーター・ジョン君。「学校に行きたい」とつぶやいた
=ケニア・ナイロビで、小松雄介撮影

 気温10度近くに下がるケニアの首都ナイロビの夜。キベラスラムに隣接する大型スーパーマーケットの駐車場の外には、厚着をした少年数人がたむろする。買い物を終えた客が駐車場に現れると、柵の外から手を差し出して食料品を乞う。ストリートチルドレンたちだ。毛糸の帽子をかぶったギリオン・マカンガ君(13)は言う。「夜は路上で布を敷いて寝る。実は高学年まで小学校に通っていたんだ。親の事情で家から追い出された」。流ちょうな英語で話す。

 キベラスラムには私設学校が複数あるが、学費を払えないストリートチルドレンを受け入れる学校はほとんどない。昼間、スラム周辺の露天市場脇には、学校に通わない少年たちが集まる。

 年上の仲間たちと談笑していたのはモハメッド・ムエッティ君(10)。厚手の上着姿なのに裸足だった。「靴を盗まれた。新しいのが欲しいけど、お金がない」と話す。取材中、突然黒い布を自分の唇に押し当てた。吸っていたのは布に浸したシンナー。すぐに目の焦点が合わなくなり、辺りを歩き始めた。

 スラムで貧しい子どもたちのための学校を運営する早川千晶さん(44)は言う。「シンナーで空腹や寒さ、悲しみさえ分からなくなる。心の苦しさを忘れるためになけなしのお金でシンナーを買ってしまうんでしょう」

 ピーター・ジョン君(12)は市場のごみ捨て場で、ひとり黙々とプラスチックや鉄くずをスーパーの袋に拾い集めていた。1キロ分で10~12ケニアシリング(約10円)。「1日数回、問屋に持ち込んで、やっと食費を稼げる」と話す。

 父が数年前に病気で亡くなり、母は仕事をせず、昼間から酒に浸るようになったという。将来の夢を尋ねると、「体操選手になりたいんだ」と答え、側転してみせた。ごみ拾いを始めて2年。「もうこんな生活は嫌だ。人生をやり直したい。キベラを抜け出して、ちゃんと学校に行きたい」【遠藤孝康】

 

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