2013年ブルキナファソ報告 瞳輝くまで (4)

金鉱山で働くボンコング・ポール君。
深い縦穴の底が彼の作業場だ
=ブルキナファソ・キンテンガ金鉱で
取り囲む男たちからやじが飛ぶと、ボンコング・ポール君(13)はもう耐えられなかった。白い粉じんの覆う頬に一筋の涙が走った。ブルキナファソ東部、砂ぼこりと加工機械の黒煙が立ち込めるキンテンガ金鉱。掘削を終えて穴を出たポール君が、将来の夢について「医師」と答えた直後だった。
09年に12・1トンだった同国の金産出量は、12年に32・6トンまで伸び、アフリカ有数の産出国に成長した。一方、中小の金鉱では問題も起きている。最も危険な掘削業務を体の小さい子どもに担わせているからで、キンテンガ金鉱も全労働者の2割にあたる約400人が未成年という。
ポール君は昨年末に小学校をやめ、金鉱で働き出した。近くの村で農業を営む父ズガラガさん(64)には、3人の妻と21人の子どもがいる。決断を下したのは天候不順で収穫が落ち、食用の雑穀も尽きかけていた頃だ。夜、両親が話すのを聞いてしまったという。「もう、ノートを買うお金はないって……」
キンテンガ金鉱
誰にも告げず、ポール君は掘削の職に就いた。無数にある縦穴は深ければ20メートルを超す。命綱はなく、もろい岩肌を裸足で潜った。小型の工具で掘ると、矢の催促でバケツが下りてきた。引き上げた石を加工し、金が見つかれば賃金を得られると聞いた。だが3カ月が過ぎてなお、分け前は手にしていない。
「本当は学校に戻りたい。もっと勉強して医師になりたいんだ」
取材にそう話した直後、耳に届いたやじは何を意味したのか。ポール君は泣き、さかむけした指を握りしめて傍らの木を殴った。だが後日訪ねたズガラガさんは言った。「夢を見るのは結構だが、家族は食べていかねばならない」。あの日以来、仕事を休んでいたポール君は、うつむいたままだった。
ユニセフ(国連児童基金)によると、同国には非公認を含む約600の金鉱があり、09~12年にはNGOとともに約1万5000人の子どもを保護した。ユニセフのアルセン・バグレ児童保護官は言う。「親を含む社会の理解は一朝一夕に得られない。金鉱で働く子どもは後を絶たないのが現状だ」=つづく【文・平川哲也 写真・大西岳彦】