主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2013年ブルキナファソ報告 瞳輝くまで (5)

自分の将来取り戻す

かつて金鉱で働いていた子どもたちが通う小学校の教室。過酷な労働からも解放され笑顔を取り戻した=ブルキナファソ・キンテンガで

かつて金鉱で働いていた子どもたちが通う小学校の教室。
過酷な労働からも解放され笑顔を取り戻した=ブルキナファソ・キンテンガで

 しゃがんだまま両腕で抱えるたらいに水を注ぎ、加工機械で砂状にした鉱石をさらす。何度繰り返しても輝く金が出るのはまれで、日が落ちる頃には膝がぶるぶる震えた。「もう話したくない。思い出すのもつらいんだ」。11年末までブルキナファソ東部のキンテンガ金鉱で働いていたアッバス・コウシング君(16)は、そう言って口をつぐんだ。

 キンテンガ金鉱の東約100キロ、ファダ市にある国立職業訓練学校。建築や裁縫など6コースに分かれて学ぶ230人の生徒にはいずれも児童労働の経験があり、うち70人は金鉱から保護された。コウシング君は昨年、NGO「テルデゾン」職員のニャンダ・イサさん(33)に勧められ、同校の門をたたいた。オートバイの整備工を目指し、座学と実技に取り組む。

キンテンガ金鉱

キンテンガ金鉱

 イサさんは2年前、金鉱で兄たちといるコウシング君と出会った。年齢とは不相応に背が低く、粉じんで痛めた目が黄色く濁っていた。家族は穀物農家だったが不作続きで、小学校を4年でやめて働き始めたと聞き、イサさんはすぐ両親を訪ねた。「将来的には、技術を身に着ける方がずっと稼げます」。面会を10回重ね、職業訓練学校を見学してもらい、理解を勝ち取った。ただ2人の兄は、今も金鉱に通っているという。

 「1家族には平均5人以上の子どもがいて、家族にも生活がある。複数が働いている場合、残念だが保護できるのは1人までだ」

 膝を抱えるコウシング君と向き合い、イサさんが言った。職業訓練学校は無償で、15~18歳に入学が許される。それに満たない子どもは小中学校に戻るよう勧めるが、親の理解を得られるのは2割ほどだという。

 コウシング君が口を開いた。「小学校に通い続けていたら(公用語の)フランス語の板書も読めたと思う」

 以前通った小学校で学ぶ201人のうち、金鉱から保護された子どもは46人に上る。コウシング君は続けた。「金鉱は駄目だ。あそこに居続けると、他の仕事に就けなくなる。僕はここで将来を取り返すんだ」。力強い目を見て、イサさんがうなずく。ゆるりと吹く朝の風が、コウシング君の頬をなでた。=おわり【文・平川哲也 写真・大西岳彦】

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