主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2017年東南アジアの零細金採掘報告【写真特集】

危険の隣 夢みつめ

死に至る 水銀蒸気

水銀を使うASGMで、砕いた金鉱石を機械に流す。水銀を含んだ泥水が周囲に流れていた

水銀を使うASGMで、砕いた金鉱石を機械に流す。
水銀を含んだ泥水が周囲に流れていた
=カンボジア・プレアビヒア州ロムトムで

◇金精製、無防備な現場

 水銀は、金の精製のため、古くから世界中で使われてきた。金と混ざって合金となる性質を利用すれば、金鉱石から高純度の金を容易に抽出できるためだ。ただ、この過程で出る水銀の蒸気は人体には有毒だ。

 ASGMではまず、山や川底に掘ったトンネルなどから金鉱石を採取し、機械で砕く。これを大きな皿の上で水銀と混ぜ、不純物を取り除き、合金を作る。その後、合金をガスバーナーなどで熱すると、水銀だけが大気中に蒸気となって飛散し、純粋な金ができる仕組みとなっている。問題は、熱した際に出る水銀の蒸気だ。吸い込むと、胸痛や呼吸困難、呼吸器系の炎症の原因となる。また肺を通じて脳に至り滞留すると、不眠や幻覚などの精神症状や、視野障害や運動障害などの神経症状を引き起こす。死亡することもある。ただ、多くの現場でマスクなどの対策は講じられていないのが現状だ。

 国連環境計画(UNEP)によると、2010年の大気への水銀の推計排出量1960トンのうち37%の727トンをASGMが占める。放出された水銀が雨に混じったり、直接現場から流れ出たりして海や川に達すると、細菌により、毒性がより強い「メチル水銀」に変化する恐れもある。メチル水銀は、日本では水俣病の原因物質となったことで知られる。メチル水銀が濃縮された魚を食べると、海外でも水俣病のような事態を引き起こす危険性がある。

 フィリピンなどではASGMでの水銀使用は禁じられているが、効率よく金を精製できるため、違法に使用されている。8月16日発効の水俣条約は、ASGMでの水銀使用や排出について「締約国は削減し、可能なら廃絶するための措置をとる」との表現にとどめた。貧困家庭の生活の支えとなっていることに配慮したためだ。

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